多数のデバイスから小容量のデータを集めたい場合に適したIoT向け無線通信技術として最近、920MHz帯を利用する新たな標準規格が次々登場している。ただし、それらは搭載デバイスの種類も稼働実績もまだ少ないのが難点だ。
一方、2012年の920MHz帯開放からこれまで、M2M/IoT用途で採用実績を積み重ねてきたのが、メーカー独自仕様の無線通信技術である。
その代表格が、2013年からOKIが提供している920MHz帯マルチホップ無線「SmartHop」だ。多数のセンサーからデータを収集するのに適した1対n通信をサポートし、大規模なセンサーネットワークの構築にも対応している点が特徴だ。
また、OKIの独自技術ながら、デバイスの選択肢も幅広い。OKI自ら無線機を提供するほか、約40社のパートナーがSmartHop通信モジュール(図表1)を組み込んだ無線機やゲートウェイ製品、電力/温湿度センサー、計測・制御機器など約70機種を提供している。ユーザーは、これらのデバイスの中から利用用途に適したものを選んで組み合わせることで比較的容易にIoTシステムを構築することができる。
用途やネットワーク規模が予め明確な自営型IoTシステムを構築する場合、この点は大きなメリットと言える。
図表1 SmartHopシリーズのラインナップ
1km通信+マルチホップSmartHopの特徴は電波到達性の高さと、無線機同士がバケツリレー方式でデータを転送するマルチホップ通信機能の2点だ。
無線機の間に障害物がない環境なら1km以上の長距離通信が可能。市街地や住宅地、屋内でも、障害物を回り込んで電波が届く920MHz帯の特性によって数百m範囲で通信できる。
さらに、マルチホップ通信によって複数の無線機を中継することも可能で、広域のセンサーネットワーク構築にも対応できる。経路を複数用意しておけば、自動的に最適な経路に切り替える耐障害性が高いネットワークの構築も可能だ。なお、通信速度は最大100kbpsである。
さらに、2016年に発売した電池駆動対応の新モジュールでは、省電力性を高めるため、無線機同士で高精度な時間同期を行い、受信側が待機状態になったタイミングを狙って正確にデータを送信することで受信待機時間を極力短くしている。つまり、ほとんどの時間は“寝ている”状態なのだ。10分間に1度のデータ送信なら、電池で10年間の連続稼働も可能という。
このモジュールを電池や太陽光発電と組み合わせれば、電波が届く間隔で無線機を“置いていく”だけでセンサーネットワークが構築できる。導入が容易で、配線工事やメンテナンスが困難な場所にも適している。