「ユビキタスAI時代が来る」、野村総研がITロードマップ2018年版を発表

あらゆるモノにAIが搭載される「ユビキタスAI」時代が到来する――。野村総合研究所は2018年3月8日、「ITロードマップ」の2018年版を発表した。ビジネスや社会に影響を及ぼすと考えられる情報通信技術についての予測をまとめたもの。中でも今後5年の重要技術トレンドとして挙げたのがAI、そしてエッジコンピューティングや音声インターフェースなどだ。

野村総研は「ITロードマップ 2018年版」の発表に当たってメディア向けの説明会を開催。IT基盤イノベーション本部 ビジネスIT推進部 グループマネージャー/上席研究員を務める城田真琴氏が、今後5年の重要技術トレンドとして次の5つについて説明した。


野村総合研究所 IT基盤イノベーション本部 ビジネスIT推進部
グループマネージャー/上席研究員の城田真琴氏

1つめは、「ユビキタスAI」――あらゆるモノにAIが到来される時代の到来だ。

城田氏が事例として挙げたのがグーグルレンズである。スマートフォンのカメラを向けると、その対象物の名前を教えてくれたり、例えばWi-Fiルーターに記載されているID/パスワードにかざせば、手入力することなく自動で文字を認識して簡単に無線LANに接続できる。

AIが搭載されるのは、こうした身近な端末だけではない。大型機械にも、そして空間そのものにもAIは搭載されていく。


トラクターに搭載されたAIが間引き作業から肥料散布、雑草の除去まで行う

次に挙げた事例が、Blue River Technology社による農業用トラクターだ。トラクターに画像認識を行うカメラを取り付け、芽を識別しながら間引き作業を行う。同時に、個々の芽に応じた肥料散布や雑草の除去も実施。人間は何も考えずトラクターを走らせるだけでよいわけだ。

空間そのものにAIを埋め込む「Ambient Intelligence(環境検知)」の先駆けとして紹介したのは、話題のamazon goだ。天井にたくさんのカメラを設置して、画像認識によって来店客の購買行動を自動認識する。

城田氏は、「amazon goのような考え方は将来、スマートシティにも応用されていくだろう。人間が考える前にAIが処理してくれる世界がやってくる」と予測した。


空間そのもののAI化の例として挙げられたamazon go

エッジコンピューティングはAIと融合
2つめのトレンドは、エッジコンピューティングの台頭だ。

エッジコンピューティングとは、データ転送の非効率性やネットワーク帯域幅・遅延の増大といったクラウドコンピューティングの課題を解決するため、ユーザー/デバイスに近いエッジでデータ処理や蓄積を行う考え方だ。通信量の削減や遅延の抑制などの効果に加えて、プライバシー保護の観点でも注目されている技術である。

城田氏はこのエッジコンピューティングの進化にもAIが深く関連すると話した。現時点では、エッジに強力なコンピューティングリソースを配置するのが難しいことから簡単な処理を行う程度に過ぎないが、ゆくゆくはエッジでAIを用いることも可能になると予測する。

背景にあるのは、エッジでも高度な処理が可能なAIフレームワークや専用チップが登場してきたことだ。「AIの推論が従来に比べて高速かつ低消費電力で行える」。


エッジで高度な処理を行うAIフレームワークや専用チップが登場している

エッジ向けのAIフレームワークの代表例としてはクアルコムの「Neural Processing Engine(NPS)」があり、推論用のAIチップには、スマートフォンやウェアラブルデバイス向けのファーウェイ「Kirin 970」がある。また、産業機器やIoTデバイス向けにも、NVIDIAやインテルがAIチップを開発・提供している。

城田氏は、「AIの学習はまだエッジ側では難しいため、当面はクラウドで行い、こうしたAIフレームワークやチップを用いてエッジでAIの推論を行う」といった使い方が広がると予測した。

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