<特集>モビリティIoT革命の衝撃(第2回)自動運転で「公共バス」再生へ、群馬大・ドコモ・SBドライブの挑戦

高齢化や過疎化に悩む地方では今、“生活の足”が失われようとしている。その主要な担い手であるバス事業者を再生させる切り札が自動運転による次世代型移動サービスだ。2020年の実用化に向けた取り組みが加速している。

「早く欲しい。自動運転ができるならすぐにでも買いたい」――。

群馬大学が2016年12月に開設した次世代モビリティ社会実装研究センターは現在、複数の自治体やバス事業者等と共同で自動運転バスの研究開発と実証実験を進めている。2000年代前半から自動運転技術の研究開発を続ける副センター長の小木津武樹氏には、バス会社からそんな声が寄せられている。「非常に積極的。それだけドライバー不足が深刻なのだと受け止めている」という。

自動運転車やコネクテッドカーによって実現される次世代モビリティは、我が国の公共交通が抱える課題を解決する切り札になり得る。特に期待がかかるのが、住民の“生活の足”を担うバス事業者の再生だ。

群馬大学の自動走行車両“初号機”
群馬大学の自動走行車両“初号機”。これを改良した“2号機”が神戸市での実証実験に提供されている。
車体上部に搭載したレーダー、カメラ、GPS受信機によって自律走行する。
走行技術はレベル4に対応しているが、公道でのテスト走行時は有人で、ハンドルに手を添えて行う

危機に瀕する“生活の足”日本バス協会によれば、乗合バスの年間輸送人員は現在約41億人で、昭和40年代のピーク時(約100億人)の4割まで減少している。事業の現況は厳しく、事業者(乗合車両30両以上)の7割が赤字だ。大都市では赤字の事業者が35%なのに対して、他の地域は89%が赤字。地方のバス事業者は危機的な状況にある。

これに追い打ちをかけるのがドライバー不足だ。2016年度時点で、大型2種免許の保有者が最も多いのが60歳代(約25万人)。これに続くのが70歳代と50歳代(共に約20万人)で、状況は今後ますます深刻化する。

小木津氏は「バス事業者は、無人化によって現在のドライバーを排除したいなどとはまったく考えていない。数年先の危機が具体的に見えており、それを補うため自動運転に期待している」と話す。

さらに、自動で走行するロボット車両が実用化すれば、バス会社は収益構造を劇的に改善できる可能性もある。バス事業のコストの実に6割を占める人件費を圧縮したうえで、路線や便数を増やせるのだ。また、定ルート走行の路線バスだけでなく、例えば、小型車両を使って、住民のリクエストに応じて配車するオンデマンド型移動サービスを提供するなど、事業の幅も広げられる。

月刊テレコミュニケーション2017年12月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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