三瓶教授が語る5Gの本質「5Gは4Gまでとは根本的に違う。ベストエフォートは時代遅れに」

「5Gの最も大切な点は“ユーザーオリエンテッド”なネットワークであること」。大阪大学大学院 工学研究科 電気電子情報工学専攻 教授の三瓶政一氏はこう話したうえで、「ベストエフォートは時代遅れになる」と予見する。日本の5G推進団体「5GMF」の技術委員会委員長も務める三瓶教授に、5Gの本質と課題、そしてビジネスチャンスについて聞いた。

――5G(第5世代移動通信システム)の実用化に向けた動きが慌ただしくなってきました。特に注目したいのが、“バーティカル”と呼ばれる通信業界以外の様々な産業界と連携した実証実験が活発化していることです。

三瓶 「4Gまでとは根本的に違う」。そう言っていいぐらい、5Gは違うものですが、一番の違いはバーティカルコネクションを意図していることです。

情報通信ネットワークの歴史をたどると、いろいろなブレークスルーがありました。私が認識している最初のブレークスルーはグローバル化、次はオールIP化です。この流れは4Gでほぼ完結し、世界中で統一方式に基づくグローバルネットワークが構築されるに至りました。また、「無線だから伝送品質が悪い」という時代も4Gまでで終わっています。

では、次のブレークスルーは何なのか。

通信業界は今、右肩上がりの状態ではなく、安定成長状態に入っています。すでに世界の人口に匹敵する携帯電話加入者がおり、スマートフォンはほぼ買い替え需要しかありません。再び右肩上がりにするためには、新たなマーケットをつくるしかないのです。

そこで次のブレークスルーとして、通信業界が5Gで仕掛けたのが、バーティカルコネクションです。飽和状態となった通信業界がマーケットを拡大していくうえで、大変重要な意味を持っています。

大阪大学教授 三瓶政一氏

――ALSOKやコマツ、大林組、東武鉄道など、様々なバーティカルが5Gの実証実験に取り組み始めているのは、通信業界からの働きかけが功を奏し、5Gへの関心が高まった結果ともいえるわけですね。

三瓶 その背景には、AIやビッグデータ、ロボットといった新たな技術分野の発展があり、そうした流れの中に5Gがあります。

また、少子高齢化による労働人口の減少も、バーティカルからの関心が高まっている要因の1つです。今後減っていく労働人口をどう補うかを考えたとき、例えば自動運転は非常に大きなインパクトがあります。

――自動運転をはじめとした、様々な新しいサービスを支える通信インフラとして、バーティカルの5Gへの期待が高まっていると。

三瓶
 そういうことだと思います。

月刊テレコミュニケーション2017年9月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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三瓶政一(さんぺい・せいいち)氏

大阪大学大学院 工学研究科 電気電子情報工学専攻教授。1980年、東京工業大学 工学部を卒業。82年、同大学大学院 総合理工学系研究科 修士課程を修了後、郵政省 電波研究所(現在の情報通信研究機構)に入所。91年に工学博士取得。カリフォルニア大学 デービス校客員研究員を経て、1993年に大阪大学 助教授。2004年、同教授に就任し、現在に至る。第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)技術委員会委員長、総務省 情報通信審議会委員も務める

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