留まることを知らないトラフィック増への対処は今やネットワーク業界全体の課題だが、なかでも帯域不足が顕著で、これを解消すべく投資が活発に行われている領域の1つがデータセンター(DC)間を相互接続するDC(Iデータセンターインターコネクト)だ。
DCIは、地理的に分散した複数のDCを連携させて1つのDCのように設計し運用するためのソリューションである。DCをまたいで仮想マシンのライブマイグレーションを行ったり、アプリケーション間の通信を容易に行えるようにすることで、可用性の向上やトラフィックの分散・最適化、リソース消費の効率化など様々なメリットを享受できる。クラウドの普及などを背景に、ここ数年急成長している市場だ。
その成長を支えているのが通信キャリア、そしてGoogleやFacebook、Amazonといった、いわゆるOTT(Over the Top)による投資だ。特に、DCI市場のトレンドを決めているのがOTTのニーズである。
「メトロDCI」がトレンドにOTTの動向で注目すべき点は2つある。1つがDCの分散化だ。
OTTは、超大容量で高い処理能力を持つハイパースケールDCを構築するのと並行して、近年は都市部に小規模な「メトロDC」を構築している。これらをメッシュ状につないで仮想的に1つのDCとして運用する形態が主流になっている(図表1)。
図表1 OTTにみるデータセンター構築・運用形態の変化
ここで問題になるのが、DC間をつなぐネットワークの帯域だ。
一般的に、DCのトラフィックのうち75%はDC内で扱われ、残りの25%が外部へ出入りすると言われている。だが、前記のような“DCのクラスタ化”が進むと、以前はDC内で処理されていたトラフィックがDC間を結ぶネットワークを流れることになる。富士通のネットワークプロダクト事業本部・光コアネットワーク事業部でシニアディレクター兼プロダクト方式部長を務める杉山晃氏は「こうした使われ方をしているメトロネットワークは、すでに帯域が逼迫している状況」と語る。
このような形態は今後、OTT以外にも広がっていくと考えられる。クラウドの手前でデータ処理を行うエッジコンピューティングや、動画配信・Webアプリを高速化するCDNの広がりもその後押しとなるだろう。
通信キャリアのColtテクノロジーサービスでアジア プロダクトマネジメント本部・プロダクトマネジャーを務める田中雄作氏も「小型DCをつなぐ形態は実際に増えてきている」と話す。
同社は広帯域サービスを主力とし、OTTから一般企業のDCまで様々なユーザーにサービスを提供している。なお、クラウド/DC事業者、そして一般企業ともに「広帯域へとシフトしている」状況で、かつニーズも多様化。特に「納期要求が厳しい。早く増設したいという要望が増えてきている」という。
これに応えるため、Coltはネットワークインフラの増強を進めるとともに、他事業者のDCとの接続も700程度まで増やし、短納期の要求に応える体制を強化している。