「この先、注意して!」「タクシーを待っているお客さんが、こっちにいそうですよ」――。
そんな様々な情報をつぶやいてドライバーに教えてくれる「IoT対応自動販売機」のフィールド実証実験が、2017年5月から東京都・墨田区を中心に始まっている。
これは、NICTのソーシャルイノベーション推進研究室がアサヒ飲料と共同で行っているものだ。街なかの各所にある自動販売機を活用して、タクシー運転手からは見えない死角にいる子供の存在を検知して通知したり、潜在的な乗客が見込める場所を検出して教えるといったIoTサービスの創出を目指している。
自販機に取り付ける「IoT無線ルーター」(右)。Wi-SUNでメッシュ型ネットワークが構築できる
また、交通関係の情報だけでなく、将来的には、自販機が設置された店舗の情報や、そのエリア固有の観光情報を近隣に配信する情報サービスにも活用する考えだ。地域コミュニティにとって低コストに展開できる情報配信インフラになり得る可能性もある。
この「地域貢献型IoTサービス」はどのような技術、仕組みで実現されるのか。WTP2017のNICTブースで、その詳細を見ることができる。
Wi-Fi、Wi-SUN、BLEをハイブリッドに活用
まず、自動販売機には、上写真の「IoT無線ルーター」を設置する。
これは、Wi-FiとWi-SUN、Bluetooth Low Energy(BLE)の3種類の通信機能を備えるハイブリッド型端末だ。電源を確保するだけで、数百mの長距離通信が可能なWi-SUNによってメッシュ型無線ネットワークが構築できる。複数の自販機にこれを設置すれば、低コストに地域IoT無線ネットワークを展開できるのだ。
Wi-SUN/BLEビーコンを送信する“つぶやきセンサー”
そして、このIoT無線ルーターは、いわゆる“Wi-Fiスポット”としての役目を果たし、さらにWi-SUNビーコン、BLEビーコンの電波を受信することもできる。例えば、通学路にある自販機にこれを設置し、子供にもWi-SUN/BLE電波を送信するビーコン端末(上写真)を持たせれば、子供が自販機に接近したことを検知して、付近を通行するタクシー等にそれを知らせることも可能になる。
このWi-SUN/BLEのハイブリッド型ビーコン端末「つぶやきセンサー」には加速度センサーも内蔵されており、子供が走っているときだけビーコンを発信することも可能だ。これにより、“飛び出し”の危険性が高いときだけドライバーに注意喚起を促すことができる。また、ビーコン端末のバッテリーを長寿命化することにもなる。
車両ドライバーのスマホに「飛び出しスポット」に近づいていることを通知する
なお、Wi-SUNとBLEの2種類のビーコンを併用することにも理由がある。
Wi-SUNビーコンは通信距離が長いため、走っている子供を広範囲に検知するのに役立つ。一方、10m程度の近距離通信を行うBLEビーコンでは、よりピンポイントな位置検知が可能だ。この特性を活かして、例えば、徘徊する高齢者の捜索に役立てるといった使い方も考えているという。下のように、探している高齢者の情報と位置を車両ドライバーに通知するのだ。
車両ドライバーに注意喚起を行うアプリケーション画面