KDDIは2017年5月18日、5G(第5世代移動通信システム)を活用した体験デモンストレーションを報道陣向けに公開した。
東京・新宿のKDDIビル本社周辺に28GHz帯を使った実証実験エリアを構築、約10mの高さに設置した案テナとバスの上部に置かれたアンテナとの間で5G通信を行った。
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アンテナには4個の箱が取り付けられており、北側と西側を向いている |
今回のデモは、5Gの特徴のうち「高速・大容量」と「低遅延」を活かした①自由視点映像、②VR(仮想現実)、③瞬間ダウンロードについて、移動中のバス車内で実施した。
バス上部にはアンテナが置かれている |
まず①の自由視点映像は、4台の8Kカメラで撮影したサッカーの試合映像を移動中のバスに配信。車内ではKDDI総合研究所の自由視点技術を使い、任意の視点からの映像を合成することで、斜めや離れた位置など様々な角度から試合を観戦できる。今回はサッカーゲームのような映像だったが、カメラの台数を増やせば、より自然な映像を実現するという。
コントローラーで様々な角度に映像を切り替えることができる |
②は、米グーグルの月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」に日本から挑戦する「HAKUTO」チームが開発したローバー(月面探査機)に搭載したカメラからの視点をVR対応ゴーグル越しに体感するというもの。GPSから取得したバスの位置情報と加速度センサーの情報を5Gを使ってサーバーに送信すると映像が生成され、5Gでゴーグルに送られる仕組みだ。これにより、バスが左折するとローバーも左に曲がるというように、バスの動きに即時に追随して映像が合成され、あたかも月面にいるような感覚を味わえる。
5Gの低遅延を活かして映像を生成するので視線の動きと映像の動きにタイムラグが少なく、「VR酔い」が避けられるという。また将来的には、MR(複合現実)での活用も予定している。
バスの動きに合わせて映像が合成され、月面移動をVRで体感できる |
③の瞬間ダウンロードは、9つの動画(500MB)をまずLTEでダウンロードした後、5Gに切り替え、ダウンロードにかかる時間の違いを体感するというもの。LTEのときはなかなかダウンロードが進まなかったのが、5Gになった途端、瞬時にダウンロードが完了した。通信速度が300MbpsのLTEですべてをダウンロードすると約130秒かかるが、3.5Gbpsの5Gでは約1秒と100分の1程度に短縮される。
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LTEから5Gに切り替えると、大容量の動画も瞬時にダウンロードが完了する |
KDDIモバイル技術本部シニアディレクターの松永彰氏は「28GHz帯という高い周波数を使うため、エリアの設計については実際にやってみないとわからない部分が大きい」とデモの意義を強調した。特に降雨の影響が懸念されていたが、当日は悪天候にも関わらず無事にデモを行え、天候に左右されないことが実証された。
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KDDIモバイル技術本部シニアディレクターの松永彰氏 |
KDDIでは大林組やセコム、パナソニックなど様々なパートナーと連携し、実証実験を開始している。今後はより雑然としたエリアなど、様々な環境で問題なく通信できるかどうかを確認することも予定しているという。