SIGFOX、世界制覇へ――KCCSにその実力と国内戦略を聞く

LPWAの1つとして注目を集めている「SIGFOX」――。2017年2月から東京23区を皮切りに、KCCSが国内でサービスを開始することが明らかになった。魅力はシンプルな技術とグローバル展開力だ。

「SIGFOXの力は、スペック比較表では表せない。LoRaWAN、NB-IoTとの違いはそこではない」

こう述べるのは京セラコミュニケーションシステム(KCCS) ICT事業本部 LPWA推進部 副責任者の日比学氏だ。KCCSは2016年11月9日、日本でIoT向け無線ネットワーク「SIGFOX」のサービスを展開すると発表した。

京セラコミュニケーションシステム ICT事業本部 LPWA推進部 副責任者の日比学氏
京セラコミュニケーションシステム ICT事業本部 LPWA推進部 副責任者の日比学氏

仏シグフォックスが開発したSIGFOXは、LPWA(Low Power Wide Area)の1つだ。そんなSIGFOXのスペックは、「1日の最大送信回数は140回、送信データのサイズは最大12バイトまで」であり、他のLPWAと単純に数値で比較すると見劣りする。しかし、要件さえマッチすれば、非常に効果的なネットワークなのだ。

フランス、スペイン、イギリス、ドイツ、オランダ、米国など、SIGFOXはすでに24カ国でサービス展開されており、日本が25カ国目。IoTの取り組みが進むにつれ、日本でもサービス開始を待ち望む声が高まっていた。

送信可能データは最大12バイトSIGFOXの技術的な特徴は、極めてシンプルな通信方式であること。通信方向は、センサーなどのIoTデバイス側からSIGFOX基地局へ向かう上りのみの一歩通行で、デバイスがデータを発信すると、その電波を受けられる基地局全てがデータを受信する。

また、回線速度はLPWAの中でも圧倒的に低速な100bpsであり、扱えるデータサイズは前述のとおり最大12バイト。こうしたスペックだけを並べていくと、SIGFOXの性能はやや心もとない。

しかし、例えばGPSの位置情報は8バイトで送信可能。その他にも温度や照度、エネルギー消費指標など、一般的なセンサーデータを送るのであれば12バイトで十分だ。しかもシンプルさを追求した分、通信モジュールや通信料金などのコストは抑えられており、使い方次第ではあるがバッテリーはボタン電池で5年はゆうに持つ。

「売り切り」タイプの商品もSIGFOXの通信料金は、1日あたりの通信回数と契約デバイス(回線)数で決まる。通信回数が少なくて契約デバイス数が多いと単価は安くなり、回数が多くてデバイス数が少ないと単価は高くなるといった具合だ。

KCCSが計画している料金体系の例は、①1日の通信が50回以下で契約デバイスが数万台のときは年1000円以下、②1日2回以下で100万台以上のときは年100円前後など。最も利用されるであろう価格帯は、①になるとKCCSは考えている。

あるMVNOは、法人向けIoTネットワークとして3G/LTEを提供しているが、最も安い通信料金プランでも月500円弱で、年額に換算すると約6000円だ。その場合の回線速度は200kbpsとSIGFOXの2000倍だが、たかがセンサーデータを送信する程度であれば、それほど速度は必要ない。

通信料金が桁違いに安いSIGFOXのネットワークであれば、「センサーと通信モジュールを搭載し、さらに3年分の通信料金込みでトータル3000円」のような商品を作れる。家電量販店やコンビニの店頭に並んでいる商品に通信サービスを付け、それを「売り切り」タイプの商品として販売することが可能になる。

「一例として、電動自転車にGPSと通信モジュールを付け、1日に1回通信するだけの盗難防止サービスなどが考えられるが、通信料金を毎月請求するのではなく、その料金を含んだ形で電動自転車を販売するといった方法も考えられる。通信サービスの売り方を根本から変革し、ビジネスモデルを変える可能性がある」と日比氏は説明する。

月刊テレコミュニケーション2016年12月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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