製品やサービス、設備等を共用し、利用者が必要なときに利用してもらう新しいビジネスモデル「シェアリングエコノミー」が注目されている。所有から利用へのシフトという点で、クラウドも同じ流れと言えるが、通信事業者においても今後、設備の共用がトレンドとなる可能性がある。
海外、特に欧州ではネットワークシェアリングは以前から行われてきた。
形態は様々だ。複数の事業者が共同でインフラを敷設・整備する事業会社を作り、そのネットワークを共用したり、国内を複数のエリアに分けて、例えば東半分にA社が、西半分にB社が構築した設備をシェアし合うといったかたちがある。前者の形態は、スウェーデン政府が人口の少ない地域に迅速に通信エリアを広げるために推奨している。後者としては、英国でボーダフォンとO2(テレフォニカ)がインフラを共用している例がある。
また、昨年には、東欧のチェコで新しいモデルも登場した。O2 Czechが、(1)顧客へのサービス提供を主体とする事業体と、(2)インフラ整備に特化する事業体に分離し、(2)を他の事業者と共用する“戦略的機能分離”を行った(図表)。この取り組みでは、アーサー・D・リトル(ADL)が戦略策定やプロジェクトマネジメントを支援したが、ADLジャパン プリンシパルの赤山真一氏によれば、「こうした分離は、これまで政府の規制によって行われてきたが、O2 Czechの例は、事業者が自発的に機能分離を行った世界で初めてのケース」という。
図表 O2 CzechのStructural Separation |
分離によって、(1)の側は新サービスの開発・提供に集中でき、(2)もインフラの共用によってコスト削減が図れる。その成果によっては、他国にも同様の動きが広がる可能性がある。