無人航空機(Unmanned Aircraft Systems:UAS)、いわゆる「ドローン」用の航空交通管制システムを構築しようとする動きが活発化している。
「UAS Traffic Management(UTM)」と呼ばれるこの管制システムは、ドローンの操縦者に対して飛行許可を与えたり、ドローンと無線通信でコミュニケーションを行いながら、飛行禁止空域に入ろうとするドローンを制止したりすることで安全な運航を支援するものだ。ヘリコプター等の他の航空機の交通管制とも連携して“空の交通安全”を守る。
米航空宇宙局(NASA)が2015年にテストを開始し、20年までに本格稼働を計画しているほか、日本政府も18年にドローンの運航管制システムを導入する方針を明らかにするなど、世界各国でUTM構築の取り組みが進んでいる。
目指すはUTMの世界標準UTMの基本的な役割は、政府や規制当局が定めたルールに従って、飛行許可空域とノンフライゾーン(非飛行空域)を設定することと、飛行中のドローンをモニタリングし、操縦者に対して指示・許可を与えることだ。個々のドローンに対してユニークなIDを付与し、それをオーナー(操縦者)に割り当てることで、飛行中のドローンの所属を特定する。
ドローンの現在位置と飛行状況は無線通信によって常時監視し、飛行許可空域とノンフライゾーンが変化するのに合わせて、UTMが操縦者へリアルタイムに情報を提供する。例えば、災害や事故が発生した場合には、救難者保護に向かうヘリコプターの運航を邪魔しないよう飛行許可空域を変更し、救難ヘリの航路周辺のドローンを制止したり、緊急着陸させるといった指示を行う。
このドローンや操縦者との間の通信にLTE/5Gのモバイルネットワークを使用するUTMの構築を進めているのがノキアだ。16年7月に設立された非営利団体「Global UTM Association」にボードメンバーとして参画。UTMシステム構築のほか、欧州委員会への標準化提案も行っている。
Global UTM Associationは多彩なメンバーで構成されており、コンシューマ向けドローンで世界シェアNo.1の中国DJIや、クラウド型のドローン操作マネジメントシステムを提供する米Skyward、スイスの規制当局FOCA、航空交通管理サービス大手の英NATS、北京航空航天大学等が名を連ねる。目的は“世界標準”のUTMプラットフォームの実現だ。
既存の航空管制管理と同様、ドローンについても、複数のベンダーがUTMを開発・提供し、ドローンを運用する事業者や各国の規制当局など様々なレベルでUTMが運用されることが想定される。ノキアのバビアルツ・セバスチャン氏は「ある国の規制に合わせたUTMを作るのではなく、どのような規制に対しても適用できる“標準的な”UTMのプラットフォームを作ることが我々の目的」と話す。
ノキア モバイルネットワーク ソリューションプログラムマネージャー バビアルツ・セバスチャン氏 |