日本の製造現場にも、IoTの波が押し寄せている。
工場のIoT化を進める上で、コネクティビティの基盤となる通信環境の整備は欠かせない。そんな中、関心を集めているのが、情報通信研究機構(NICT) ワイヤレスシステム研究室 主任研究員の板谷聡子氏による研究だ。「工場の無線化に関する問い合わせは多く、打ち合わせすら待っていただいている状況」(板谷氏)だという。
同氏は、「無線通信の進化を見据えた上で、通信技術をどう工場に取り込み、管理するか」をテーマに、2014年1月から研究活動を開始。現在「FLEXIBLE FACTORY PROJECT」という名称で、民間企業から集まった約20名の協力研究員とともに工場の無線化に取り組んでいる。
情報通信研究機構(NICT) ワイヤレスネットワーク総合研究センター ワイヤレスシステム研究室 主任研究員 理学博士 板谷聡子氏 |
工場管理者は“無線”に期待「工場の管理者が現場で利用したい通信手段は、有線よりも無線」(板谷氏)。工場というと、信頼性がより高そうな有線が好まれるイメージもあるが、実は違うという。
それには大きく2つの理由がある。1つは、製造ラインの組み換えを容易に行えるようにしたいためだ。近年、工場で製造する製品が変わるサイクルは短くなっており、製造ラインを頻繁に組み換えたいというニーズは高まっている。無線通信であれば有線通信と違ってケーブルを引き直す必要はなく、製造ラインを組み換え易くなる。
もう1つの理由として、有線は物理的にケーブルが切れることが挙げられる。数多くのケーブルが這い回る工場内において断線してしまうと、どこが切れているか特定するのは難しく、復旧に時間がかかる。