PBXはクラウド化しても安くならず、メリットが少ない――。
PBX業界ではこれまでそうした声が主流だった。これは半分事実であり、一般的なIaaS/SaaSのようなコスト削減効果はクラウドPBXには望めない。主装置購入・設置費用はカットできても、電話機/外線ゲートウェイの購入や配線、設定等に費用がかかり、初期コストの削減効果は目減りする。さらに、PBXは10年以上使うことも珍しくないため、長期間の利用を前提とすれば、オンプレミス型のほうが「総コスト」は安くなるケースが大半だ。
「オンプレより高くても選ぶ」では、クラウドPBXを選ぶユーザーは何を求めているのか。
「日々の運用管理や、数年後に発生する増設・機能追加、さらに将来を見据えて『電話を含めたコミュニケーションをどうしていけばいいのか』ということまで我々に任せられる。本来業務に資源を集中できることが価値だ」と話すのは、NECネッツエスアイ 執行役員常務 企業ソリューション事業本部長の野田修氏だ。
同社は6月、クラウドPBX「ネッツボイス音声クラウドサービス」を発売した。「発売後、一気にきた」と引き合いも好調で、すでに採用が決まっている事例もある。「オンプレミス型と比べて安くはならなくても、『それでもクラウドで』という声は少なくない」状況だ。
図表1 「ネッツボイス音声クラウドサービス」のイメージ |
事実、NECネッツエスアイはコスト削減を前面に出した売り方はしていない。例えば内線500台、外線100チャネルの条件で、ネッツボイスの費用(導入時の設定・工事費、月額料金の累積等)と、オンプレミス型の費用(初期費用+保守・サポート費の累積等)を試算すると、導入当初はネッツボイスのほうが安いが「3年半から4年で逆転する」という。
ただし、これはPBX運用管理担当者の人件費等は含んでおらず、クラウド化すれば、そうした“見えないコスト”も軽減され、また社員数の増減や拠点の統廃合等が起こった場合にも柔軟に運用規模・形態が変えられるといった、上記の比較に現れないメリットが得られる。顧客企業はそうした利点を冷静に見極めて、クラウドPBXを選択し始めているのだ。