――3月にNTTドコモがNFV(Network Functions Virtualization)によるコアネットワーク(vEPC)の運用を開始しました。通信事業者によるNFVの商用導入の動きは世界的に広がってきているのでしょうか。
エドルンド そう考えていいと思います。すでに私どもに対する通信事業者からのRFP(提案依頼書)にはNFVが必須条件として入るようになっています。NFV関連の見込み案件数はこの1年で10倍になり、実際に商用化につながるケースも多くなっています。その1つが、今年2月に発表したスイスの大手通信事業者スイスコムによるvCPE(仮想化顧客構内設備)の事例です。
CPEは企業が社内ネットワークを構築する際に必要となるファイヤーウォールやルーターなどの機能をサービスとして回線とともに提供するものですが、NFVやSDN(Software Defined Networking)を活用することでコストを引き下げ、これまでリーチできなかった中堅中小企業向けに非常に柔軟性の高いサービスを提供できます。仮想化技術を活用することで新しい分野のビジネスに取り組めるようになるのです。
――すでに、実証試験(PoC)ではなく商用ベースでNFVが導入されるようになっていると。
エドルンド そうです。NFVの商用導入は、3つの分野を中心に広がってきています。最も多いのがvEPC、次にvCPE、3つ目が仮想化されたIoTプラットフォームです。IoTプラットフォームは多くの通信事業者がvCPEと組み合わせて導入しています。既存ネットワークと分けてIoT用のネットワークを新たに構築しようというのです。これをMVNOに提供することで市場を切り開こうとする事業者もでてきています。
PoCも1~2年位前までは技術を理解することに主眼が置かれていましたが、最近ではPoCを通じて、自らが想定しているソリューションの検証を行おうといったものが中心になっています。
――NFVを商用化しようという事業者はやはり大手が中心なのですか。
エドルンド 準大手、中堅規模の通信事業者の導入事例も多く、我々はこの部分から導入が始まると見ていたのですが、最近Tier1と呼ばれる大手の通信事業者が本格的にNFVに取り組むようになってきました。春に発表されたAT&TのECOMP(Enhanced Global Control Orchestration Management Policy)が典型です。このプロジェクトはNFV/SDNでネットワークを再構築しようというもので、300名以上の開発者を投入して18カ月で800万行以上のNFVのコードを書き上げています。こうした取り組みは、大手以外にはできないのではないでしょうか。ECOMPではオープンソースを最大限に活用することで早期にNFV/SDNへの移行を果たそうとしています。