――2009年度上期の決算を発表されたばかりですが、企業ネットワークソリューション事業本部の現状を教えて下さい。
保坂 1年前からの厳しい市況は変わっていませんが、減速感は弱まってきました。そうしたなかで当事業本部は上期の目標を達成することができました。早い段階からの構造改革の成果と、国内・海外の営業の頑張りによって、ようやく底を打ったと実感しています。
――具体的に、どのような取り組みをしたのですか。
保坂 1つは組織をスリム化し、事業本部と国内外の営業との間で販売目標の共有をしっかりとできるようにしました。もう1つは、レガシーからIP化へのマイグレーションシナリオを描きました。今年に入って特に海外でこうした取り組みの成果が出ており、大型の案件も獲得できるようになっています。当社のグローバルでのシェアは現在9%台ですが、2桁シェアを目指し再スタートしました。
「チームNEC」でお客様を支援
――日本の企業ネットワーク市場の現状をどう捉えていますか。
保坂 従来は「情報はPC」「コミュニケーションは電話」というように、「I」と「C」それぞれのシステムが垂直統合され、拠点間を「点と点」で結ぶものでした。それが「ICT」という一体のサービス基盤に変化し、広域、つまり「面」で利用する形態に変わってきています。このため、単にPBXのリプレースというだけでは商談が進まなくなっています。
高度なITシステムと連携するユニファイドコミュニケーション(UC)の世界に一気に置き換えるよりも、例えばテレビ会議/インスタントメッセージのような身近な所からのニーズが多くなっており、徐々にIP化に伴う市場拡大のチャンスが増えてきています。
IPの普及率を見ると、当社の大手企業や自治体のお客様では、昨年度(2008年度)の出荷ベースで約85%がIP化しています。こうしたお客様はIP化の次のステップでアプリケーション連携をやろうとしています。
一方、中堅・中小企業のIP普及率は昨年度末で約10%強でした。今年(2009年)になって約20%程度までアップし、不況を脱すればこれからますます上昇が見込まれます。
つまり、私たちNECが考える本格的なUCの世界はこれから拓ける展望が見えてきたというのが、国内市場の現状ではないでしょうか。
――そうした状況のなかで、どのような方針で企業ネットワーク事業に取り組んでいきますか。
保坂 当社では「OneNEC」として社内の部門の壁を越えた活動をしていますが、企業ネットワーク事業は販売店様や開発パートナー様との連携した活動であるため、「チームNEC」を合言葉にお客様をバックアップしています。
具体的には、お客様の「競争力強化」、お客様の「安心・安全」な業務遂行のお手伝い、お客様のオフィスの「環境負荷軽減(エコ)」の3つのキーワードを挙げており、それらを「イノベーション」で実現していきます。
ポイントは3つのキーワードがそれぞれ独立しているのではなく、「&」で結びついている点で、それがNECの強みだと思っています。例えば、お客様はコストダウンのような「競争力強化」だけでなく、「安心・安全」も「エコ」も求めるようになっていますよね。そうしたニーズに応えていくには、どれか1つではなく、すべてを提案できないとお客様を満足させることができません。