FVNE事業も手がける新生・丸紅テレコムの「光コラボ」戦略

ブロードバンド専業として新たなスタートを切った丸紅テレコム。光コラボ「Mひかり」を通じて獲得したユーザーに新たな価値を提供することで、囲い込みを図る。

丸紅グループの一員として1993年の設立以来、携帯電話販売や固定回線販売を手掛けてきた丸紅テレコム。今年4月、同じ携帯電話販売代理店であるMXモバイリングとの合併後、同時に再び同社から分社化し、ブロードバンド専業の子会社として生まれ変わった。

新生・丸紅テレコムが事業の主軸と位置付けているのが、NTT東日本/西日本の「光コラボレーションモデル」を活用した「Mひかり」だ。

「国内の通信市場が成熟化する中で、光コラボは事業者にとってストックビジネス化を進めるもの。そのストックをベースにしてさまざまなコンテンツを載せていくことで将来への展望が開けるので、積極的に展開していきたい」と代表取締役社長の横井利明氏は意欲を見せる。

光コラボは開始当初から、NTTドコモやソフトバンクなどによるモバイルと固定のセット割を中心に大きな注目が集まってきた。ユーザーにとってもコスト削減効果が見込めるとあってフレッツ光からの移行が加速すると思われていたが、現在のところ約1800万の既存ユーザーのうち1割程度が「転用」で開通するにとどまるなど、予想よりも緩やかなペースで推移している。

「NTTと比べると光コラボ事業者はブランド力や信頼性で及ばない。コンテンツやソリューションなどそれ以外の部分で付加価値を提供することが、光コラボ事業者には求められているのではないか」と横井社長は分析する。

Mひかりも一見したところ、どの事業者が提供しているかわかりにくく、「ブランド力の向上が来年に向けた課題の1つ」と常務取締役ネットワーク事業本部長の永澤均氏は言う。

提携先の有力ブランドで販売そうした中で丸紅テレコムが光コラボ事業で強みになると考えているのがサポート機能だ。

同社は前身時代から長年にわたり、フレッツ光の代理店として販売を手掛けてきた。それだけに、申込の登録機能や開通の調整機能などルールやノウハウを熟知している。そうした強みを発揮するために「多くの会員を持つ組織と提携し、そのブランド力と我々の機能を組み合わせた事業展開を検討している」と永澤氏は言う。

図表 新生・丸紅テレコムの光コラボ事業
図表 新生・丸紅テレコムの光コラボ事業

具体的には、①リブランド、②業務サポートという2つのビジネスモデルを想定している。

①リブランドの代表例が、Jリーグの横浜F・マリノスで、10月からプロスポーツ界として初となる光回線サービス「横浜F・マリノス光」の提供を開始した。

プロサッカーチームが光コラボ事業者となった背景には、光回線サービスの提供と併せて、ホームゲームでのイベントや育成組織の大会のライブ映像配信など加入者しか受けられない特典を提供することで、サポーターとのコミュニケーションを促進する狙いがある。

提携先の横浜F・マリノスという有力ブランドが前面に出る代わりに、丸紅テレコムは「裏方」として、バックヤードから運用までを担当している。

②業務サポートについては、光コラボ事業への参入を希望する事業者向けにサービス提供基盤の構築や運営を支援するというもので、FVNE(仮想固定通信提供者)とも呼ばれる。

フレッツ光は開通までのプロセスが複雑で、立ち上げにもかなりのコストがかかる。そのため、光コラボに関心はあっても参入の敷居が高いと感じている企業は少なくない。丸紅テレコムにも「光コラボのバックヤード業務を受託してほしい」との依頼が数多く寄せられているという。

FVNEの提供先として期待されるのが、信販や流通のように多くの会員を持ち、顧客とのコンタクトに「紙」を活用している企業だ。

これらの企業では、顧客向けに紙を使ったダイレクトメールやカタログを活用していることが多く、コスト削減や効率化の観点からネットへの移行ニーズを持つ。オンラインによる情報提供は大量の顧客情報を収集・分析することが可能になり、丸紅テレコムにとって新たな業務サポートにつなげることが期待できる。

また、現在、FVNE事業を積極的に手掛けているのは他にU-NEXTなど限られた事業者のみのため、丸紅テレコムならではの強みを打ち出しやすいというメリットもあるという。

月刊テレコミュニケーション2015年11月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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