IoTでため池の水位を遠隔監視――新ビジネス創出を目指す協和エクシオ

協和エクシオは、メンテナンスが容易なため池の水位監視システムを開発した。同社は、従来からのICTのインフラ工事やソリューション事業に加え、次代の経営を支えるIoTビジネスに力を入れる。

将来の水位予測も可能ため池の水位を監視するシステムの提供に乗り出しているのは協和エクシオだけではなく、他社も参入している。そのなかで、クラウド・セキュリティソリューション推進部門課長代理の榊原知洋氏は、同社のシステムの差別化ポイントとして「水位の簡易的な予測ができること、そして漏水がわかること」の2点をあげる。

1点目の、水位の予測の基となっているのは農水省が作成しているため池の設計基準の数字と、その数字に同社が手を加えて作成した数式だ。その数式と実データを重ね合わせて補正する仕組みとなっている。データを蓄積すればするほど、水位の予測精度は高まる。

将来の水位が予測できれば、前もって水門を開けておくなど、決壊を防ぐ対策をタイムリーに講じることが可能となる。大雨が降るなか、水位を確認するために、ため池に足を運ぶことは危険を伴う。遠隔で現在の水位確認や将来の水位予測ができれば、ため池に足を運ぶことは不要となる。

ため池に漏水が起きているかどうかがわかることも農家にとって重要ななことだ。漏水を放置しておくと決壊をもたらす危険性が高まる。一般的に漏水の発見・確認はボーリング調査によって行われているが、ため池遠隔水位監視システムに雨量計をセットしておけば、農家はボーリング調査を行うことなく日々のシステム運用の中で漏水を検知することができる。

IoTビジネスで成長を牽引山口県の実証実験では、太陽光発電を導入した。山口県のため池のうち、電源が近くにあるのは3割。残りの7割は電源が近くに存在しないという。そこで、ため池の周囲に太陽光パネルを設置し、太陽光発電による運用の検証に取り組んでいる。

ため池の堤に異常がないか確認するために、農家はため池周辺の草を刈っているが、太陽光パネルを敷設するとパネルの下に草が茂らなくなる。太陽光発電はその草刈りの作業を減らすという副次的な効果ももたらす。

実証実験の目的は、農家の声をシステムの機能や操作性の改善に活かすことだ。農家からは、「雨が降る都度、水位を確認するためにため池に行かなくて済むようになり、とても助かっている」との声が届いている。自宅にいながらため池の水位を把握できるシステムは好評だ。また、漏水を検知する道具としても有効と感じているという。

協和エクシオは、実証実験を通じてシステムの機能・利便性に関する検証を重ねつつ、自治体や農家にため池遠隔水位監視システムを紹介する営業活動を進めている。「農家の反応はどうか」という問いに松浦氏は「とてもウェルカム。ため池の水位を安価に監視できることが評価されている」と話す。

ため池遠隔水位監視システムは同社にとって次代の成長を牽引するIoTビジネスの1つである。これまで同社を成長させてきた主力事業は通信工事だ。通信工事は受注して施工すれば終了する。

それに対し、ため池遠隔水位監視システムはクラウドサービスとして提供するものであり、継続的に利用料収入を得ることが可能なビジネスモデルとなる。ため池遠隔水位監視システムは、新しい事業を生み出すインキュベーション機能を担う、ソリューション推進本部が手塩にかけて育てている新事業だ。「ため池遠隔水位監視システムはいま孵化しつつある段階。成功させて花を咲かせたい」と松浦氏は意欲を示す。

ため池の水位を監視するために構築したM2Mプラットフォームは、様々な用途に適用することが可能だ。「センサーを取り替えれば社会インフラの構造物の監視など、いろいろなシーンに使える」(松浦氏)と、センサーメーカーとの協業強化を進め、農業や入退室管理など様々な領域でIoT事業を推進していく。

月刊テレコミュニケーション2015年9月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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