NTTが作ったB2B2Cモデルの実験工房「アトリエN」の狙い

NTTが将来のB2B2C型のビジネスモデルを想定したサービス開発テストベッド環境「アトリエN」をスタートしている。パートナー企業による新サービスの試作・検証を支援、さらに商用化も視野に入れている。

NTTグループは「バリューパートナー」をキーワードに、B2C型モデルから多様なパートナー企業とサービスを共創するB2B2C型のビジネスモデルへの転換を進めている。そのための代表的な具体策としては、例えばNTT東西の「光サービス卸」が挙げられるが、パートナー企業とのサービス開発を活性化するための試みもスタートしている。

NTT研究所が4月1日からトライアルを開始したサービス開発テストベッド環境「アトリエN」である。

アトリエNは、NTT研究所やパートナー企業の各種機能をAPI(Application Programming Interface)を介して提供し、デベロッパーやSIerがこれらを試用して新サービスの考案・試作・検証などを行えるようにするもの。様々なプレイヤーと協業して、サービス・アプリケーションを早く、安価に開発できる新たな枠組みを創り上げることが狙いだ。

アトリエNで試作された有望なサービス・アプリケーションをNTTグループ各社と連携して商用化することも視野に入れている(図表1)。以下、このプロジェクトの中心となっているNTTネットワークサービスシステム研究所(以下、NS研)の取り組みを紹介する。

図表1 アトリエNの基本コンセプト
アトリエNの基本コンセプト

標準APIの策定にも寄与アトリエNのテストベッド環境の中核となるのが、NS研が設置したAPI-GWだ。NTT研究所やパートナー企業が提供する各種のAPIと接続し、これらをデベロッパーやSIerなどの「サービス開発パートナー」がインターネットを介して利用できるようにするもので、認証やAPIを提供するシステムに過度な負荷がかかることを防ぐなどの機能も持つ。さらにこのプロジェクトの大きな狙いの1つである、標準APIの実現にも寄与することになりそうだ。

NS研でアトリエNのプロジェクトを担当する上原貴之氏は、「APIを提供していく際には様々なサードパーティの製品が使われることが想定されるが、それぞれにAPIの記述ルールが異なると開発者にとっては使い難いものになってしまう。そこでNTTが提供するAPIについての仕様や記述ルールの検討を始めている。API-GWから開発者に提供されるAPIについては、これに沿ったものにしたいと考えている」と語る。

NTT 上原貴之氏
NTT ネットワークサービスシステム研究所
ネットワークサービス基盤プロジエクト
オープンネットワークファンクション DP
主任研究員 上原貴之氏

今回のトライアルではRESTなどに準拠したWebベースの標準APIが用いられるが、ケースによってはこの標準ルールと個別のAPIの記述ルールの差を埋めるバッファーの役割をAPI-GWが果たすことになる。

NTT研究所では、TM Forum(テレコムマネージメントフォーラム)などの標準化団体での議論を踏まえて、将来NTT事業会社がサードパーティに網機能を開放する際の標準API仕様の検討を進めている。

アトリエNの取り組みには、トライアルに参加するパートナー企業の声を、このNTTグループの標準APIの仕様策定に反映させる狙いもあるという。

月刊テレコミュニケーション2015年6月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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