――今年1月、携帯電話販売代理店のITXからビッグローブ会長兼社長に就任されました。
中川 NECを退任した後、4年ほど携帯電話販売代理店のNECモバイリングで社長を務めていました。そこを定年退任した2013年、ITXを買収した日本産業パートナーズから、私が携帯電話販売業界で業績を上げことを評価していただき「ITXの経営にあたって欲しい」と言われ、ITXで会長を務めていました。
昨年4月にはビッグローブ買収になり「いずれビッグローブの経営もみて欲しい」という話をいただいていました。
もっと先の話と思っていましたが、昨年11月にITXのノジマへの売却が決まったため、「すぐビッグローブに行ってくれないか」ということになりました。そこで12月にITX会長を辞め、1月からビッグローブに専念することになりました。
――ビッグローブはNECの事業が母体でしたが、どういう印象ですか。
中川 NEC時代に私は通信系事業を担当していたので、IT系のビッグローブの人たちとは直接の関係はありませんでした。ビッグローブにいるのは全員がもともとNECの社員です。
基本スキルは相当高い社員が揃っています。事業内容は決して目新しいものではないですが、磨けば非常に大きな可能性を持っていると改めて感じています。
SIMロック解除に期待
――ビッグローブは大手ISPとして業界をリードしてきましたが、最近はMVNO事業にも注力しています。売上約800億円、社員約450人規模と認識しています。
中川 当社は300万人のブロードバンド会員を持っており、FTTH/ADSLなどの固定回線や高速モバイル回線でインターネットアクセスサービスを提供しています。シェアではOCN、Yahoo!BBに次ぐ第3位です。会員向け光ブロードバンドサービスの収益が事業の根幹を狙っています。
――光コラボが始まりましたが、ISP事業者にとってサービスの基盤であるフレッツ回線の契約維持が課題ですね。
中川 今一番の戦いは光コラボです。当社でも、NTT東西の光卸を受けて「ビッグローブ光」を始めました。フレッツとISPのセットで戸建てが月額5180円、集合住宅が同4080円のサービスです。これにはMVNOサービス「うれスマ」(同2780円)とのセット割引メニューも用意しています。
また、NTTドコモと連携し「ドコモ光 タイプA」でプロバイダーにビッグローブを選んでいただく方針です。ビッグローブ会員のフレッツ光回線を転用し、ドコモ光で引き続きビッグローブとの契約を続けてもらうことです。
さまざまな販売チャネルを駆使し、コールセンターを活用して会員の維持・拡大を図っています。これが目下の第一課題です。
――300万会員を守るための具体策は何ですか。
中川 ビッグローブ光にすると今までより通信料がお安くなります。ただ、これは他社もほぼ一緒ですから、「biglobe.ne.jp」というアドレスが変わらないというメリットを訴えています。
――光コラボは固定と移動、ISPのセット販売になっているので、モバイルの商品力が大きな要素になります。ビッグローブはMVNO事業にもいち早く取り組んできました。
中川 今は「うれスマ」という名前のスマホやSIMカードを提供しており、およそ20万契約ぐらいです。調査会社の発表によると、NTTコミュニケーションズとIIJに次ぐポジションを獲得しています。
MVNOはセット販売の商材にとどまらない、非常に大きな可能性があると考えています。将来的には、100万、200万加入に持っていき、1番か2番あたりになりたいと考えています。
――そのための戦略はどういうものですか。
中川 これまでは、端末の準備がシャープとLGエレクトロニクスの2機種しかなく、ユーザーの選択肢が限られていました。ここは改善していかなければなりません。その点、SIMロック解除が5月から義務化されますが、これはとても大きな飛躍点になると考えています。
――SIMロック解除義務化は、MVNOにとって追い風になると。