組込みソリューションベンダーのアドバネット。同社はイタリアに本社を置くEurotechグループに属するが、2015年2月12日、EurotechグループのM2M/IoTへの取り組みを説明する記者会見が都内で開かれた。
なお、EurotechグループのM2M/IoTへの取り組みの歴史は長い。例えばM2M/IoT向けのプロトコルとして注目が高まっているMQTTは、「配管のポンプやバルブとビジネスアプリケーションを結び付けるソリューション向けに、我々がIBMのために15年前に開発したものだ」と、Eurotechでマーケティング責任者を務めるロバート・アンドレス氏は紹介した。
M2M/IoTで必要になる複雑な要素をパッケージ化
「乗り越えないといけない壁は、明確に見えている」。アンドレス氏が、M2M/IoTが直面している課題として最も強調したのは「複雑性」だ。
数多くの企業が今、M2M/IoTの活用による自社製品・サービスの高付加価値化を目指している。ビジネスである以上、M2M/IoTサービスを「より安く」「より早く」実現することが求められるが、そこに立ちはだかるのが複雑性である。
実際に企業がM2M/IoTを活用したシステムを構築しようとすると何が起こるか。
「まず1種類のセンサーでは足りないと気づく。しかも、それぞれのセンサーが利用するプロトコルもバラバラ。1つのやり方ではデータを転送できないことが分かり、さらにセンサーのデータを読み取るには、それぞれのプロトコルに対応したソフトウェアが必要ということも分かる」。アンドレス氏によると、こうした複雑性が「M2M/IoTの成長をとどめている」という。
そこでEurotechグループでは、「M2M/IoTで必要になる複雑な要素を1つのパッケージにとりまとめ、簡単なソリューションにする」ことに注力しているそうだ。
EurotechのM2M/IoTソリューションの全体イメージ。アプリケーション以外の部分を提供する |
具体的には、マルチサービスゲートウェイとM2Mインテグレーションプラットフォームの2つで、複雑性の課題を解消する。多様な通信規格やプロトコルに対応し、様々なセンサーを収容してクラウドなどにデータを送信するのがマルチサービスゲートウェイの主な役割。そして、ゲートウェイから受け取ったデータを変換し、アプリケーション側に引き渡すのが、M2Mインテグレーションプラットフォームの主な役割である。
M2M/IoTの持つ複雑性を隠蔽し、アプリケーションから簡単に利用可能にするのが、Eurotechグループのソリューションというわけだ。アプリケーション開発はLinux/Javaベースで行え、M2M/IoTデバイスの管理機能なども備えている。
ゲートウェイは各業界のニーズに合わせて様々なタイプを用意。M2Mインテグレーションプラットフォームは、「Everywhere Cloud」の名称でパブリッククラウドサービスとして提供しているほか、オンプレミスでも導入できる。
Eurotechが提供するマルチサービスゲートウェイ群 |
Eurotechグループのソリューションを活用し、開発されたM2M/IoTサービスはすでに数多いという。アンドレス氏が紹介した例の1つはスポーツ医療関連だ。アメリカンフットボールやホッケーなど、頭部へ大きな衝撃がかかるスポーツはいくつもあるが、ある企業はヘルメットにセンサーを取り付け、頭部への衝撃を計測するソリューションを開発した。「彼らは非常に小さい会社だったが、Javaのプログラミングを行うだけで、これを実現できた」
頭への衝撃を計測するM2M/IoTシステムの概要 |
M2M/IoTの複雑性を解決するための取り組みとしては、現在、様々な団体による標準化活動も活発になっている。クアルコムが中心になった「AllSeen Alliance」、インテルやサムスンなどが参加する「Open Interconnect Consortium」などだ。
しかし、アンドレス氏は、「多くの団体が設立され過ぎており、そのほとんどは潰れるだろう」と否定的。M2M/IoTの複雑性を隠ぺいするソリューションは、今後も必要とされ続けるだろうという考えだ。