SPモード解禁に期待高まる
今後、Wi-Fi 6E/7はどう進化するのか。ポイントの1つが、屋外で高出力が可能な「SP(Standard Power)モード」だ。日本では、Wi-Fi 6E/7向けに5925~6425MHz帯が割り当てられているが、既存の無線システムとの干渉を避けるため、現行制度で利用できるのは、屋内・低出力に制限されるLPI(Low Power Indoor)モードと、屋内外で使えるが超低出力のVLP(Very Low Power)モードに限られる。
こうした現状を踏まえ、高速かつ高信頼な通信が求められる業務や、スタジアムなどの屋外でも6GHz帯を活用できるよう、SPモードの国内導入に向けた検討が総務省の作業班で進められている。SPモードで利用する周波数は、すでにLPIモードおよびVLPモードで使用されている5925~6425MHz帯に加え、6570~6870MHz帯が候補に挙がっている。
特に6570~6870MHz帯は、放送事業や電波天文等でも利用されており、SPモードの導入には、既存システムとの干渉を回避しながら周波数を共用するためのAFC(Automated Frequency Coordination:自動周波数調整)システムが不可欠となる。現在、その技術要件や運用方法についても議論が進められている。
SPモードにより、Wi-Fi 6E/7のユースケースはさらに広がりそうだ(図表2)。「AP1台で従来の4~5倍のエリアをカバーできる。学校であれば、校内だけでなくグラウンドまで通信エリアを広げられる。災害時には広範囲に電波を吹き、より多くの被災者がフリーWi-Fiを利用できるようになる」
図表2 SPモードの利用シーン

NTT東日本の山形氏はこう述べたうえで、「法整備に加え、高出力化が可能になる分、緻密なエリア設計が必要になる。ベンダーやSIer側のエンジニアリング能力も備わってくれば、2028年度頃から実際にSPモードが使われ始めるだろう」と見る。
Wi-Fi 8は「超高信頼」
そしてWi-Fi 6E/7の先にあるのが、2028年頃の実用化が見込まれている「Wi-Fi 8」だ。昨年6月に公開された「Draft 1.0」では、最大スループットや変調方式、利用周波数帯といった基本的な仕様はWi-Fi 7を踏襲する一方、「超高信頼性」に重点が置かれている点が最大の特徴だ。
具体的には、端末がAP間を移動する際の通信断やパケットロスを抑える「Seamless Mobility Domain(SMD)」、複数のAPが協調して無線リソースを効率的に利用する「Multi-AP Coordination(MAPC)」などの機能が盛り込まれる予定だ。SMDはシームレスなローミングを実現し、MAPCはデータ送信のタイミングや送信電力をAP間で調整し、干渉の抑制等に寄与すると期待されている。
ヤマハの秦氏は、「Wi-Fi 8は、速度よりも、通信の不安定さを抑え、“切れずにつながる”信頼性に主眼を置いた規格だ」と指摘。通信トラブルの少ない無線環境を実現し、将来的に有線LANに迫る安定性を目指す第一歩になるとの展望を示す。
Wi-Fi 8の実用化はもう少し先になりそうだが、足元ではWi-Fi 6E/7の普及が着実に進んでいる。今後、SPモードの解禁をはじめとする制度整備が進めば、Wi-Fi 6E/7の活用シーンはさらに広がっていくだろう。
[月刊テレコミュニケーション 2026年10月号の記事を再構成]














