ミリ波の議論はしばしばピークスループットの高さに焦点が当てられるが、実運用上の価値はむしろセル容量の拡張にある。広帯域を確保できるという特性は、端末1台あたりの速度向上以上に、同時接続ユーザー数が増加した際の安定性に寄与する。
高密度のトラフィックが発生する環境において、重要なのは個々のユーザーがどれだけ速度を出せるかではなく、エリア全体としてどのレイヤーにトラフィックを分散させるかという設計である。ミリ波はこの際、Sub6 や、さらに周波数の低い既存帯域の負荷を吸収する“容量レイヤー”として機能する。したがって、その導入検討においてはカバレッジよりも、トラフィック集中箇所へのピンポイントな適用が合理的となる。
図表1 広帯域ミリ波の効果イメージ

利用率が伸びない構造的要因
ドコモのネットワークにおいても、ミリ波の利用割合が伸び悩む傾向が確認されている。この背景には、いくつかの構造的要因が重なっている。
第一に、電波伝搬特性に起因するカバレッジの不連続性である。直進性の高さにより遮へいの影響を受けやすく、従来のマクロセル中心の設計では安定したエリア形成が難しい。
第二に、端末側のミリ波対応状況である。ミリ波の端末への搭載率および、ミリ波対応端末の普及率が伸び悩んでおり、トラフィックオフロードとして十分機能しない。
第三に、ネットワークと端末だけでなく、利用のシナリオ、すなわちユースケースが必要なことである。ミリ波は自然発生的に使われる帯域ではなく、利用を促すシナリオ設計が必要になる。
これらは相互依存関係にあり、個別最適では解決できない点が特徴的である。
エリアを整備しても対応端末が少なければトラフィックは乗らず、端末が増えても利用動機が弱ければミリ波への接続機会は限定される。さらに、体験価値が伝わらなければ端末普及も進みにくい。つまり、ミリ波利用の伸び悩みは技術単独の問題ではなく、ネットワーク・端末・利用シーンを同時に設計してはじめて解決する問題である。










