ソリューション特集Wi-Fi 6E/7の現在地と未来 国内でも対応APが拡大、SPモード解禁で広がる可能性

国内でもWi-Fi 6E/7対応アクセスポイント(AP)の選択肢が充実し、企業・自治体で採用に向けた動きが活発化している。また、「SPモード」の解禁や「Wi-Fi 8」の実用化により、ユースケースはさらに広がっていきそうだ。

Wi-Fi 7の特徴は?

Wi-Fi 7の特徴も押さえておこう。6GHz帯を使えることに加え、変調方式がWi-Fi 6/6Eの1024QAMから4096QAMへと進化。1シンボル(1回の信号)に載せられるビット数が増え、データ伝送効率は約1.2倍に向上した。Wi-Fi 6/6Eでは最大160MHzだった1チャネル当たりの帯域幅も、320MHzへと倍増した(図表1)。

図表1 Wi-Fi 7の特徴

図表1 Wi-Fi 7の特徴

さらに、マルチリソースユニット(MRU)やマルチリンクオペレーション(MLO)といった新たな機能も加わった。MRUは、Wi-Fi 6/6Eでは1台のデバイスにつき1つしか割り当てられなかったRU(リソースユニット)を、複数割り当てられるようにする。周波数帯域を有効活用しながら、端末のスループットを高められる。MLOは、2.4/5/6GHzを同時利用できる機能で、複数の周波数帯を組み合わせてデータを送れるため、通信の高速化・安定化が期待できる。

プリアンブル・パンクチャリングと呼ばれる新機能も追加された。広いチャネルの一部で干渉が発生していても、その部分だけを避けて残りの帯域で通信を継続できる機能だ。混雑環境下でも高速通信を維持しやすくなると期待されている。

Wi-Fi 7APの国内投入相次ぐ

国内でもWi-Fi 7ソリューションの選択肢が広がってきた。シスコのWi-Fi 7対応APを採用したNTT東日本のハイエンド7プランは、最大通信速度11.5Gbpsを実現。「APの利用に必要な設定は当社が行うため、お客様は機器を開梱して取り付けるだけで利用できる」(飛田野)点がハイエンド7プランの特徴の1つだ。

NTT東日本の「ギガらくWi-Fi ハイエンド7プラン」が採用したシスコ製Wi-Fi 7対応AP(提供:NTT東日本)

NTT東日本の「ギガらくWi-Fi ハイエンド7プラン」が採用したシスコ製Wi-Fi 7対応AP(提供:NTT東日本)

ユーザー企業は買い切り型とサブスク型から選択でき、サブスク型の月額料金は4950円となる。同社は最大通信速度2.4GbpsのWi-Fi 6ソリューション「ハイエンド6プラン」もラインナップしており、こちらは月額4180円。Wi-Fi 7との差額は770円だ(いずれも税込)。「価格も大きく変わらないため、今後はWi-Fi 6ではなく、Wi-Fi 7を選ぶお客様も増えるだろう」と井達氏は述べ、「Wi-Fi 7を活用し、Wi-Fi 5などの旧規格を利用しているユーザーの更改を促していきたい」と意気込む。

APRESIA Systemsが開発したWi-Fi 7対応AP「KOKOMO-W222BEIS」は最大9.3Gbpsの通信速度を実現し、APやスイッチ、ゲートウェイ装置をまとめて管理できるクラウド型管理サービス「KOKOMOクラウド」に対応する。端末の接続状況やスループットなどを一元的に把握できるダッシュボードは、すべての表示項目を日本語化することにこだわったという。

APRESIA SystemsのWi-Fi 7対応AP「KOKOMO-W222BE-IS」(提供:APRESIA Systems)

APRESIA SystemsのWi-Fi 7対応AP「KOKOMO-W222BEIS」(提供:APRESIA Systems)

「Wi-Fiがつながらない」といった問い合わせには、まずAIチャットボットが製品マニュアルを基に回答し、AIで解決できない場合は同社の専門チームがチャットで対応する。「国内メーカーだからこそ、かゆいところに手が届くという方向で勝負しています」とSE 本部 製品企画部 主管技師の志川裕之氏は強調する。

ヤマハは、最大通信速度9.3GbpsのWi-Fi 7対応AP「WLX333」(トライバンド)と、6.5Gbpsの「WLX232」(デュアルバンド)をラインナップ。同時接続数はそれぞれ最大270台、170台となる。

両機種とも、今年の秋頃にリリース予定のWi-Fi可視化ツール「WellnessOnStage」に対応。APの電波強度や接続端末数に加え、「業務を快適に行えているか」を独自指標で可視化。通信品質が悪化しているエリアや対処の優先度を見える化し、ネットワーク管理者の負担軽減に寄与する。なお、WLX333はWi-Fi 6対応のWLX323と同様、Fast DFS v2にも対応する。

ディーリンクも、今年7月に最大通信速度9.3GbpsのWi-Fi 7対応AP「DAP-E9560」を国内市場へ投入。オンプレミス型管理システム「Nuclias Connect」に対応し、専用のアプライアンス製品を導入することで、LAN内のAPを一元管理できる。今年度中には、2.4/5GHz帯のみに対応する低価格なWi-Fi 7APも展開する計画だ。

ディーリンクのWi-Fi 7対応AP「DAP-E9560」(提供:ディーリンク)

ディーリンクのWi-Fi 7対応AP「DAP-E9560」(提供:ディーリンク)

Wi-Fi 6E/7を巡っては、認証機関の動きも活発化している。Wi-Fi 6E/7対応APなどを開発するベンダーにとって、ブランド価値の向上等の観点から、自社製品が高い品質や性能を満たしていることを証明する意義は大きい。テュフ ラインランド ジャパンは、無線LAN技術の標準化団体であるWi-Fi Allianceから認定を受けた認証試験機関として、Wi-Fi認証サービスを提供している。

製品事業部 電気製品部 Wireless/IoT課 シニア エンジニアの松原一寛氏によると、近年Wi-Fi 6E/7関連の認証依頼が増えているという。AP等を手掛ける通信機器ベンダーに加え、カメラやプリンター、カーナビなどのメーカーからの引き合いも多く、対応製品の市場投入がさらに進みそうだ。

工場・放送分野からの引き合いも

各社ともWi-Fi 7ソリューションの提供を開始したばかりで、導入事例は限られるが、Wi-Fi 6Eと同様、接続端末数が多く、途切れにくい通信を必要とする企業・自治体の需要に応えていく考えだ。ディーリンクの畑中氏によると、「学生数や接続端末数が多い学校は、高速性に加え、同時接続時の安定性も重視する」。

ヤマハやNTT東日本も、業界業種を問わずアプローチを進めているという。ヤマハのWLX333とWLX232は、白色に加え、半透明の黒色を採用した「ブラックスケルトンモデル」を用意しており、白いAPでは目立ちやすい内装のオフィスや飲食店などにも提案していく方針だ。

ヤマハのWi-Fi 7対応AP「WLX232」 (提供:ヤマハ)

ヤマハのWi-Fi 7対応AP「WLX232」 (提供:ヤマハ)

NTT東日本には、工場や放送分野からの引き合いも寄せられているという。例えば、モバイル網の電波が届きにくい工場におけるハンディターミナルや業務用スマートフォンの利用、イベント会場での映像伝送などだ。「ロボットの制御など、高い通信性能が求められる用途にはローカル5Gが適しているが、そこまでアプリケーションの性能要件が厳しくなければ、Wi-Fi 7で十分対応できるだろう」と同部 同担当の山形祥貴氏は語る。

APRESIA Systemsは、ネットワーク機器を一元管理できるKOKOMOクラウドを強みに、複数拠点を構える企業・自治体などに提案していくという。「当社は国内に在庫を確保しており、海外ベンダーと比べて在庫があればすぐに出荷できる点も引き合いにつながっている」(志川氏)

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