IoT/M2Mカンファレンス2014 講演抄録3年後も使えるIoT/M2Mシステムは、APIを使った組み立て可能性が鍵

日本アイ・ビー・エムの鈴木徹氏は2014年10月3日に都内で開催されたIoT/M2Mカンファレンス2014で講演の席に立ち、IoTをビジネスに活用するためにどのような仕組みを構築すべきかという方向性を示して見せた。デバイスとシステム、システム同士をAPIを使って疎結合することがなぜ必要なのか、どのようなメリットがもたらされるのかが、事例を交えて語られた。

3年後に使えるシステムではなく、3年後に組み替えられるシステムづくり

IoTをビジネスに活かすためには、従来の垂直統合から、会社の壁を超えた水平分業へと、システムを超えて、ビジネスのレベルでコンポーザブル(組み立て可能)にしていく必要がある(図表5)。プログラムを書いているようなスピード感では間に合わないと、鈴木氏は言う。そこで注目されるのが、APIを活用するアプローチだ。

図表5 従来の垂直統合から、会社の壁を超えた水平分業へ
従来の垂直統合から、会社の壁を超えた水平分業へ

「3年後に使えるシステムを今から作るのは、現在では不可能です。しかし3年後に取り換え可能な部品によるシステムを作ることはできます。多種多様で進化も早いセンサーやデバイスと通信し、IoTの価値をビジネスにつなげていくためには、技術緩衝領域を作って変化を吸収できる仕組みにしておかなければなりません。システムとデバイス、システム同士をAPIで結べば、デバイスやシステムの変化がSoRに影響しません」(図表6)

図表6 APIによる『組みたて可能なビジネス』の実現
APIによる『組みたて可能なビジネス』の実現

続いて鈴木氏はAPIを3つに分類して見せた。ひとつは誰でもアクセス可能な公開API、そしてパートナー向けに限定公開されるAPI、もうひとつは外部には非公開の社内向けAPIだ。この中でもっともビジネス的に興味を惹くのが、おそらくパートナー向けAPIだろう。

「自社のコアビジネスに関して収集したデータをAPIで提供し、サービスやビジネスの創出を促し、新たなエコシステムを生み出していくのはこのパートナー向けAPIです。しかし社内APIも軽視できません。部門ごとにシステムを持ちデータ共有が進まなかった状況を、社内APIで打破できる可能性があります。ビジネスに有効なAPIを作り、社内の他部門に売り出していく発想もあっていいと思います」

さらに鈴木氏は、APIは公開して終わりではなく、公開後のバージョンアップなどマネジメントが必要であると付け加えた。

高速プロトコルMQTTやビジネス活用事例の紹介も

IoTをビジネスに活かしていくためにどうすべきかという視点に注力した講演だったが、終盤でプロトコルに関する話も少しだけ語られた。

「M2Mに適した軽量で高速な通信プロトコルが、MQTTです。現在OASISを通じて標準化が進められており、デバイスの変化に関わらず長期間安心して使えるのが特徴です」

鈴木氏はそう述べて、MQTTに関する説明を簡単に行なった。MQTTは常時接続で双方向通信を行なうため、デバイスに向けたプッシュが可能。しかも軽量で高速なため、多数のデバイスを同時に接続するIoT/M2Mに適している。オーバーヘッドの大きいHTTPでは不可能なリアルタイム性の高い通信も実現可能だ。

「MQTTを使ったメッセージングハブIBM MessageSightを使えば、100万台のデバイスに毎秒1600万メッセージを配信できます」(図表7)

図表7 IBMのメッセージング・テクノロジー
IBMのメッセージング・テクノロジー

MQTTを使ったSpirent Velocity社のクルマのパーソナライズ・サービス事例も紹介された。オーナーがクルマの各種設定をスマートデバイスなどコントロールできるというサービスである。その1つの機能としてスマホから開錠キーを押すと、Spirent社がユーザと認証した上で自動車に開錠コマンドを送信、ドアがアンロックされるというセキュリティの仕組みであるが、HTTPでは通信に時間がかかりすぎるため、MQTTとIBM MessageSightが採用されている。

その他にも、スマートフォンを使った家電のコントロールや心臓ペースメーカーの遠隔監視などいくつかのIoTビジネス化事例を駆け足に紹介したのち、鈴木氏はIoTとSoR、SoEを連携させてビジネスを創出する鍵について次のようにまとめた。

・リアルタイム・双方向性の活用
・膨大な量のデータの効率的な収集・配信
・得られた知見を魅力的なAPIとしてビジネス展開
・SoE/SoR/IoTの組み合わせを柔軟に試行錯誤
・リアルタイムのアナリティクスによる洞察

これらを理解したうえで、実際に手を動かして試してみることが大切だと鈴木氏は参加者に語り掛けた。

「IBMでも、IoTの力を体験できる場をたくさん用意しています。ワークショップセッションなどにぜひ参加してください。またIBM Message Sight for Developersの試用やIBM IoT Cloud Foundationへの参画を通じて、実際に体験しながら知見を広めてみてください」

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