<連載>フィジカルAIの通信・システム要件フィジカルAI市場のこれから 通信事業者・ICTベンダーに広がるビジネスチャンスは?

サービスロボットを中心に、急成長が見込まれているフィジカルAI市場。通信事業者やICTベンダーにはどのようなビジネスチャンスが広がり、どんな役割が求められるのか。その可能性を探る。

ローカル5GやWi-Fi 7が台頭

ここまではAIロボットの中でどのカテゴリーが台頭してくるかを見てきた。次は、フィジカルAIを支える通信・ICT技術のうち、今後成長が期待できる分野について見ていこう。

富士経済 同部の松井義孝氏は、その1つとして、ローカル5Gを挙げる。「低遅延かつ高信頼な通信が求められる環境として、半導体製造や医療、エンタメ、公共インフラなどが挙げられる。こうした環境でフィジカルAIを実現する技術として、ローカル5Gが注目されている。導入にはコストや免許取得などの様々な障壁があり、急成長は見込みにくいが、国産ベンダー等による安価な製品の上市により、市場競争が活発化することで、今後の市場拡大が期待される」と述べる。

富士経済 インダストリアル・プロダクツ事業部 松井義孝氏

富士経済 インダストリアル・プロダクツ事業部 松井義孝氏

また、専門知識を持たない一般企業が自社でローカル5Gを運用するハードルも高い。そのため、こうした課題を解消する「マネージド型」の需要が高まっていくと同氏は予想する。

Wi-Fi 7も、広帯域かつ電波干渉の少ない6GHz帯を利用できることに加え、複数の周波数帯を同時に利用する「Multi-Link Operation(MLO)」などの機能により、工場やオフィス等で稼働するフィジカルAIを支える通信基盤としても期待が高まる。

MRI 先進技術センター 主任研究員の氏丸智彰氏は、「VLMだけでは高精度なフィジカルAIの制御には限界があり、現場で取得したセンシングデータの活用が不可欠だ」と指摘したうえで、「ロボットを開発・導入する側にとって、実装負担を抑えられる通信・センシング一体型のモジュールは魅力的。今後、有望な技術領域になるだろう」と予測する。

三菱総合研究所 先進技術センター 主任研究員 氏丸智彰氏

三菱総合研究所 先進技術センター 主任研究員 氏丸智彰氏

ゼロトラストをはじめとするセキュリティソリューションも、市場拡大が期待される分野の1つだ。

例えば、フィジカルAIの普及に伴い、無線を通じてロボットのソフトウェアを遠隔から更新する「OTA(Over The Air)」の活用が広がっていくと予想される。OTAにより、ロボットの機能追加や不具合修正、セキュリティパッチの適用などを迅速に実施可能になると期待されている。

ただ、OTAによるソフトウェア更新が途中で失敗してしまうと、一部のコンポーネントだけが新旧バージョンの混在状態となり、システム全体の動作が不安定化するおそれがある。また、更新経路や配布ファイルが攻撃者によって改ざん・悪用されるリスクも否定できない。AIロボットが一度乗っ取られれば、他のロボットや周辺システムへ被害が波及する可能性もある。

このため、OTAサーバーとロボット間の通信を保護する暗号化技術や、ロボットや利用者、管理端末などを都度認証・認可し、必要最低限の権限だけを付与するゼロトラストの考え方が、フィジカルAI時代にはより一層重要性を増すだろう。

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