FaceTimeで作業現場の映像をリアルタイム伝達
バウハウス丸栄では、リモートアクセスソリューションを活用し、iPhoneから社内のイントラネットへセキュアに接続できるようにしている。
また、社内メールにはトランスウェアのWebメールサービスを採用。iPhoneを使って、どこでもメールの送受信が可能になり、外出先から社内メールをチェックできないという課題は解消された。
これと併せて、事業部ごとに共用のメールアドレスを使用して関係者だけが閲覧できる仕組みも整えた。そのメリットについて、中部第Ⅱ本部 第1事業部 事業部長の大洞昇司氏は、「事業部のメンバーがお互いにどんな仕事をしているのかが分かりますし、部下に届いたメールを見て、『こんなメールが届いているけれど、進捗はどうなっているのか』などと問いかけることもできるようになりました」と語る。
バウハウス丸栄 中部第Ⅱ本部 第1事業部 事業部長 大洞昇司氏 |
アップルのビデオ通話アプリ「FaceTime」も利用している。FaceTimeが活躍するのは、例えばこんなシーン。作業現場で不足した特注部品について説明する際、言葉だけでは相手に伝わりにくい場合がある。
「以前は現場近くのコンビニエンスストアのFAXを使ってイラストを送ることもありましたが、常にコンビニが近くにあるとは限りません。それがFaceTimeを使うことで、特注部品の映像を実際に見せながら説明できるようになり、正確な情報共有とスピーディな対応が可能になりました」(大洞氏)
作業現場の状況をiPhoneで撮影して情報共有 | 必要な部品をiPhoneで映して社内のスタッフに伝える |
スマホ向けのビジネス用クラウドアプリをセット利用できるKDDIのパッケージサービス「ベーシックパック」を利用し、様々なクラウドアプリも活用している。
例えば「KDDI ファイルストレージ」だ。これは、暗号化やウイルスチェックなどのセキュリティ機能が充実した1人あたり10GBのストレージサービスで、図面や写真などの大容量ファイルを外出先でもiPhoneから閲覧できるようになった。図面の細かいところまで見たい場合は、iPhoneではなく画面の大きなノートPCを利用しているが、「これができるのも、iPhoneにテザリング機能が備わっているからです」と小森氏は話す。
MDM(モバイル端末管理)サービス「KDDI Smart Mobile Safety Manager」を活用し、端末情報の取得や端末紛失時の遠隔データ削除など、セキュリティの一元管理も実現している。
「フィーチャーフォンの頃は、すべてユーザーである社員任せでした。しかし、iPhoneと同時にKDDI Smart Mobile Safety Managerを導入したことで、個人の裁量に任していたことを、会社で判断できるようになりました」(笠原氏)。例えばバウハウス丸栄では、KDDI Smart Mobile Safety Managerの機能を使って、FacebookやTwitter、LINEなどのSNSアプリをiPhoneで利用できなくしている。
「iPhone導入と一緒に採用したサービスのなかで、最も利用価値が高いと思います」と笠原氏が話すのは、「KDDI SMARTアドレス帳」だ。これは、会社・共有・個人のアドレス帳をマルチデバイスで利用できるクラウド型アドレス帳サービス。権限設定やアクセス制限、アドレス帳の一括インポート機能などを備えている。
従来、新しい社員が入社したときなど、アドレス帳を変更する必要が発生した場合は、グループウェアで告知して社員1人ひとりにアドレス帳の変更作業を促していた。しかし、すべての社員が実行しているとは限らなかった。「それがKDDI SMARTアドレス帳を導入したことで、業務管理部で一元的にアドレス帳の変更を行えるようになったのです」(笠原氏)
なお、KDDI ファイルストレージだけではなく、KDDI Smart Mobile Safety ManagerとKDDI SMARTアドレス帳もベーシックパックに含まれているクラウドアプリである。
3つめの課題であった作業現場に常駐している社員が社内会議に参加できないという問題も解決した。テレビ会議システムを導入し、iPhoneと連動させることで、どこにいても社内会議に参加できるようになったからだ。現場の情報をリアルタイムに複数の社員に伝えることも可能になった。
「かつては毎月、本社に社員が集まって会議を行っていました。しかし現在は、そのうち8回はテレビ会議での参加に切り替え、今まで通り本社に集まるのは年4回にしています。これにより、移動にかかる交通費を大幅に削減できました」(笠原氏)
iPhoneからテレビ会議に参加することもできる | 会議室に設置されたテレビ会議システムで作業現場にいる社員ともリアルタイムコミュニケーション |
このようにiPhoneと、これと連動するアプリやシステムを導入することで、当初抱えていた3つの課題を解決したバウハウス丸栄。だが、iPhoneの導入効果はそれだけにとどまらない。
「社員が働きやすい会社」に向かって前進
前述の通り、バウハウス丸栄ではiPhoneから社内のイントラネットにリモートアクセスできるようにしている。この仕組みを使って、外出先からも経費精算システムや就業管理システムなども利用できるようにしており、業務効率が大幅に向上したという。
「定量的なデータはありませんが、社員の残業時間は確実に減っています。三ヶ尻社長が目指す『社員が働きやすい会社』の実現につながっているのです」(小森氏)
労働組合が発行する新聞に「おすすめアプリ」が掲載されるなど、社員の間ではiPhoneをさらに有効活用していこうという意欲も高い。全社規模でiPhoneを導入した企業はまだそれほど多くないため、社員はiPhoneを使えることを誇りにも感じてもいるという。
また、顧客から「iPhoneを使っていてカッコいい」「デザイン会社らしい」という声を多くもらうなど、企業イメージのアップにもつながっているそうだ。
今回のiPhone導入について三ヶ尻氏は、「まだ緒に就いたばかりですが、若い社員を中心にiPhoneをうまく活用している姿を見ると、一定の評価はできると考えています」と話す。
そのうえで、「一番大事なことは現場の安全を守ることです。その意味でも現場の映像をリアルタイムに共有できるのはとてもいいこと。将来的にはパートナー企業とも連携し、災害時などにも活用できるICTシステムを構築していきたいです」と付け加える。
社員の働きやすい職場環境をつくりたい――。三ヶ尻氏の願いは、iPhone導入によって大きく前進した。