AIで「オープン」が強みに
——Open RAN市場の立ち上がりは世界的に遅れましたが、今後どう取り組みますか。NECはNTTドコモとの合弁会社OREX SAIを介してOpen RANソリューションのグローバル展開を図っていますが、いくつか事例も生まれてきています。また、経済安全保障を背景に、米国政府主導でオープンソースのCU/DUを推進する「OCUDU Ecosystem Foundation」が今年設立されるといった新たな動きもあります。
佐藤 我々が期待していたスピードとギャップがあったのは事実ですが、ITの世界での例を見ても、オープン化の流れが逆行することはほぼありません。我々はマルチベンダーかつトラステッドなネットワークを広げる努力を続けていきます。
Open RANには間違いなくコストメリットがあります。ただ、マルチベンダーゆえに最初の手間がかかるため、それを避けたい通信事業者の多くが現状はシングルベンダーを選択しています。
この“最初の手間”というハードルさえ越えることができれば、Open RANの普及は進んでいくでしょう。AIで自動デプロイできるようになり、極端なことを言えば、ボタンをワンクリックで基地局が立ち上がるようなところまで到達すれば、オープンであることが強みになります。
経済安全保障の観点から、アジアを中心としたグローバルサウス諸国との連携による事例を積み重ねることで、Open RANを普及していくのも1つの方策だと考えています。
実績が活きてくる
——vRANやモバイルコアネットワークのソフトウェア化についてはどう見ていますか。NECはともにNTTドコモの商用ネットワークで大規模な実績があります。
佐藤 既存ネットワークの刷新・高度化に伴ってコアネットワークも進化していきます。中でも重要なのは、ソフトウェアで柔軟に制御できることにより、AIによる最適化や自律運用といった機能と高い親和性を持つ点です。
我々は、5Gの延長線上には、6Gを捉えていません。AIネイティブな社会になっていくなか、AIにフィットしたネットワークが6Gと定義されていると考えています。ソフトウェアベースのvRANやコアネットワークとAIが掛け合わさることで、AIネイティブなネットワーク基盤は実現できますが、そこでNECのソフトウェアが積み重ねてきた信頼性や性能が活きています。
また今後、vRANとコアネットワークを一体化してパッケージ展開していくことも考えています。vRANとコアネットワークを同じ仮想化基盤に載せることでトータルのコストも下げられます。
——NTTドコモとNECは今年2月よりAWS上で5Gコアネットワークの商用稼働を開始するなど、コアネットワークのパブリッククラウド移行も進んでいます。これもNECのグローバル展開にとって追い風になりますか。
佐藤 ハードウェアと切り離した形での展開がよりやりやすくなります。ただし、データ主権の問題がありますから、各国の規制や通信事業者のポリシーに依存します。
AI-RANは“両にらみ”
——AIネイティブネットワークでは、これまで人手に頼った運用が完全自動化されていくと期待されています。
佐藤 我々も、いわゆるレベル5の完全自動化ネットワークを目指して取り組んでいます。
6Gの特徴の1つに、無線通信用の電波でセンシングも行うISAC( Integrated Sensing and Communication)がありますが、無線センシング機能が入ってくると、デジタルツインもより構築しやすくなるでしょう。仮想空間でネットワークを自律的に構成し、現実空間へフィードバックして最適化するといったことが、人手を介さず、AIを駆使して実現できる世界が実現されていくと考えています。
モバイルネットワークの領域では、新しいマネタイズ手段が見つからないなか、コスト重視でシングルベンダーソリューションが選ばれる傾向がありましたが、AIネイティブ社会になって新たな価値が生まれてくると、こうした状況も変化するという期待もあります。
——AIネイティブ社会における通信事業者の新たな価値の1つとして注目されているのがAI-RANです。
佐藤 AI-RAN AllianceにはNECも参加しており、その動向をしっかり注視しています。
ただ、エッジにあまねく高価なGPUを配置することに経済合理性が本当にあるかというと、消費電力の問題も大きいですし、若干の疑問が残ります。軽量な推論であれば、CPUで十分に処理できると見ています。その一方、エッジで高負荷の処理を大量に行う世界が来るのであれば、やはりGPUが必要ですから、我々としては両にらみで、マルチプラットフォームに対応できるように備えています。
——カスタムシリコンへの投資を継続するエリクソン、エヌビディアの出資を受けたノキアとは違うアプローチということですね。
佐藤 特定のプラットフォームには依存せず、顧客が実現したいユースケースに適したプラットフォームを提供していくことで、他社と差別化していきます。
さらに、ネットワークアーキテクチャーだけでなく、クラウドやそのデータセンター資源まで含めた取り組みも、これから進めていきます。分散されたコンピューティングリソースをどうつなげていくかを考えていくうえでは、RANだけではなく、アーキテクチャー全体の議論が必要だからです。
先ほど説明した通り、我々は今年度から、海底ケーブルから宇宙、防衛まで、いろいろな技術を持った部隊がいる社会インフラのセグメントの1事業部門となりました。これらが一体となって、経済安全保障を守るためのデジタルインフラを革新していくことが大きな目標です。









