東急池上線・戸越銀座駅(東京都品川区)に接する戸越銀座商店街は、ICTを活用した情報発信やインフラ整備、マスコットキャラ「銀ちゃん」や「戸越銀座コロッケ」プロモーションなど、さまざまな活性化事業に取り組んできた。マスメディアの活用に加えて、2000年代後半からインターネットを使った情報発信にも注力。ポータルサイト「戸越銀座ネット」への1日の平均アクセス数は2000(ページビューは平均8000)と、全国的な知名度も高い。
こうした取り組みによって近年の来街者数、通行量は増加傾向にある。戸越銀座銀六商店街振興組合で理事長を務める亀井哲郎氏は、「より遠くから人を集める商店街になろうと、戸越銀座の地名のブランディングに力を入れ、都市型観光を目指してきたことによって土日祝日の来街者は倍増した。全国の商店街が活性化策に悩んでいるが、そうした方々も、戸越銀座は次に何をやるのかと期待してくれている」と話す。
戸越銀座銀六商店街 振興組合 理事長 亀井哲郎氏 |
最短2日、初期投資もなし
戸越銀座商店街連合会が推進する活性化計画「戸越銀座くらうどプロジェクト」の中でも特に力点が置かれているのが、急速に普及するスマートフォン/タブレットの活用だ。
例えば、来街者のスマートフォンに情報発信やクーポン配信等を行えば、実店舗への来店を促すことが可能になる。また、店舗の業務でもスマートフォンとアプリを組み合わせれば、これまで導入が難しかったICTサービスを活用することも容易になる。
その一環としてこの5月に導入したのが、コイニー(東京都渋谷区)が提供するモバイル決済システム「Coiney」である。
これは、スマートフォンやタブレットにクレジットカードの読取端末「Coineyリーダー」を取り付けて決済を行うものだ。iPhone/iPadなどのイヤホン端子にCoineyリーダー(1台目は無料)を取り付け、決済アプリをインストールするだけで、加盟店審査も含めて最短2日で利用開始できる。月額利用料もかからず、決済手数料も3.24%と、据置型のCAT(Credit Authorization Terminal)端末の4~5%より安い。
Coineyリーダー(丸型の端末)はスマホ/タブレットのイヤホン端子に取り付ける。1万円以下の場合はサイン不要ですぐに決済が完了。レシートは、お客が指定するアドレス宛てにメールで送信するほか、その場でBluetoothプリンターから出力することも可能だ |
「これならすぐにできると感じた。リスクが非常に少ない」と亀井氏は話す。CAT端末とそれを利用するための回線を引き込むのに比べて、短期かつ低コストに導入できることが採用の決め手になった。
まず、5月23日に実施したイベント「酔う喰うバルⅣ」でのクーポン販売にCoineyを利用。イベント参加店44店舗で飲食できるクーポン「バルチケット」(当日価格4000円)の販売所でカード払いに対応した。
販売所は商店街路上に3カ所設置したが、そこにスマートフォンを持ち込むだけで決済が可能になる。Bluetoothプリンターで、レシートの印刷も行える。17時のイベント開始直後から早速、お客がバルチケットをカードで購入。販売員も初めての利用だったがスムーズに接客が進んでいた。