<連載>6G時代の新・業界地図6GとAIの融合はどう進むか AI-PoweredからAI-Nativeへ

6Gの挑戦は大きく2つ。ネットワーク内にAIを組み込むこと、そして、社会・産業のAI活用を支えるコンピューティング基盤の役割をも担うことだ。新興勢力も含めた新たなエコシステム作りが加速する。

6G性能を測る「新たな指標」とは

低遅延化は、UL増強と合わせて、NW for AIの重要な要素となる。

一問一答のチャットボット形式で動く生成AIに代わり、今後は自律的に動くAIエージェントや、現実世界を自律的に認識・判断し、柔軟な動作や作業を行うフィジカルAIが主流になる。これらは人間よりも遅延に敏感なうえ、仕事によっては何十ものAIエージェントが連動して1つのタスクをこなすこともあり得る。その間で遅延が積み重なれば、AIアプリ/サービス自体の満足度は大きく毀損される。「人間なら我慢できる1秒の遅延も、AIエージェントは非常に長く感じるだろう。レスポンス速度の向上は必須だ」(鹿島氏)。

さらに、AIエージェントはデータセンター、エッジクラウド、あるいはデバイス内に分散し、時には移動する。6Gネットワークと、そこに内包されるコンピューティング基盤には、その動きとトラフィックの変化に追従できる柔軟性が求められる。

そしてもう1つ、AI時代の6Gネットワークは“運ぶもの”も変化する。単にビット(データ)を運ぶだけでなく、AIの処理能力に直結する「トークン」をいかに効率的に運ぶことができるかが重要視される。いわば、通信インフラとしての価値が、通信速度から、「AIコンピューティング能力」へと拡張されることになる。

そのため6G標準化の場では、通信速度(bps)に代わり、トークン処理能力に基づく新たなトラフィック指標を確立しようとする議論が始まっているという。この行方も見逃せない。

業界構造への影響は

AI技術の浸透によって、エヌビディアやアーム、マイクロソフトらが創設メンバーであるAI-RAN Allianceをはじめとする様々な業界団体が設立され、通信業界以外や新興プレイヤーの存在感が増してきている。前述の通り、3GPPと連携を深めるO-RANに関しても今年、O-RAN仕様に準拠したCU/ DUソフトウェアの開発を主目的に、Linux Foundation傘下にOCUDU Ecosystem Foundationが設立された。このOCUDUにはエヌビディア、ノキア、エリクソン、AT&T、AMD、クアルコム、ソフトバンクらが名を連ねるなか、AIネイティブ無線を開発するスタートアップのDeepSigとSoftware Radio Systems(SRS)が初期ソフトウェアの開発を担う。6G時代の通信インフラを、LinuxやKubernetesのようにオープンソース化し、誰でも開発・革新できるエコシステムを作ることが目的であり、モバイルインフラ業界に大きな変革をもたらすかもしれない。

AI-Nativeな6Gの実現には、こうした新興勢力の台頭が欠かせない一方、セルラー網の構築、インテグレーション能力や運用ノウハウの重要性には変わりがない。6G時代も既存のインフラベンダーのパートナーシップモデルを通じたより広範なエコシステムの構築が進むだろう。AIという知能をネットワークの隅々にまで行き渡らせるため、通信業界以外のチカラがより重要になることは間違いない。

月刊テレコミュニケーション 2026年6月号の記事を再構成]

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