<連載>AIインフラの新潮流AIデータセンターを支える「脱炭素電源」の可能性 原子力と再エネは主役になるか

生成AIの普及に伴いデータセンターの電力需要が急増するなか、原子力や再エネをはじめとする脱炭素電源に注目が集まっている。本稿では、AIデータセンターを支える新電源の最新動向を紹介する。

小型モジュール炉のニーズは?

最近は、SMR(Small Modular Reactors:小型モジュール炉)への注目度も高い。小型ゆえに設置場所の制約が比較的小さく、初期投資や建設期間も大型の原子力発電所に比べて抑えやすいとされている。出力が小さい分、安全性を確保しやすい点も特徴の1つだ。

こうしたSMRの利点に着目し、AWSと電力事業者の米Energy Northwest社らは、ワシントン州で最大12基・合計960MW規模のSMRを整備するプロジェクトを計画している。まずは4基に着工し、2030年代の稼働開始を目標とする。グーグルは、米Kairos Power社が開発するSMRを最大7基導入し、DC向けに最大500MW規模の電力供給を見込む。初号機は、2030年頃の稼働を予定しているという。

ただ、国内への導入は容易ではないのが現状だ。日本総研の早矢仕氏は、「日本の場合、用地が限られているため、SMRを建設できる候補地は既存の発電所周辺に限られる。新たにSMRを導入するよりも、大型炉を建て替えた方が効率的という議論になりがちだ」との見解を示す。MRIの吉永氏も、「大規模な需要地では、経済合理性の高い大型炉の方が適している。SMRは、系統規模や安定性に制約のある様々な地域での活用が見込まれている」と解説する。

ホンダらが水素を用いた実証

水素も脱炭素電源の有力な選択肢の1つとして期待が高まっている。水素は燃焼させても基本的に水しか生成されず、CO₂を直接排出しない点が特徴で、天然ガスや再エネなど多様な原料から製造することができる。

本格導入に向けた動きも見られる。米スタートアップのECLは2024年6月、カリフォルニア州に水素を主電源とするDCを本格稼働させた。太陽光などの再エネを活用する場合とは異なり、24時間365日電力供給が可能な点も水素のメリットだ。

国内では未だ実証フェーズに留まるものの、本田技研工業(ホンダ)らが昨年8月に水素燃料電池を活用した実証をスタート。トクヤマの食塩電解事業で副次的に製造される水素を使い、ホンダが開発した定置用燃料電池で発電。その電力を三菱商事が運用するDCに供給する計画だ。FCV(燃料電池自動車)に搭載された燃料電池を再利用することも想定しているという。

ホンダが開発した定置用燃料電池電源

ホンダが開発した定置用燃料電池電源

ただし、「水素は天然ガスの数倍のコストがかかるため、現時点では使いにくい。今後は、他の電源を補完する形での活用が中心になるのではないか」と日本総研の早矢仕は見る。

DC/通信事業者も戦略的な関与を

ここまで再エネや原子力などの動向を見てきたが、国内ではまず2030年代前半にかけて、大規模な電力供給が可能な地域を示した「ウェルカムゾーン」の活用を通じ、東阪以外の地域に大規模DCの集積地を形成することが当面の最優先課題となる。それ以降のフェーズで、脱炭素電源の潜在力が高い地方へDCの分散化が進むとMRIは予想する。

地方にDCを設置することで、機密性の高い医療・介護データを域内でセキュアに処理・保管しながら医療DXを推進できるだけでなく、農機やドローン、自動運転バスの遠隔制御といったリアルタイム性が求められる処理を担うことで、地域交通やスマート農業などの高度化を支える役割も期待される。

こうした未来を実現するうえで重要となるのが、電力(ワット)と情報通信(ビット)のインフラ連携だ。DCと電力インフラでは、計画から運用開始までのリードタイムが異なるため、両事業者が計画や見通しを共有しながら各インフラを整備し、DCの稼働開始と同時に電力供給が可能な体制を構築する必要がある。

MRIの吉永氏は、「系統接続のあり方や再エネ誘導の仕組み、電力価格や市場制度の設計などについて、電力会社や国任せにするのではなく、DC事業者や通信事業者の立場で制度設計の段階から戦略的に関与していくことが大切だ」と強調する。

再エネや原子力のポテンシャルを最大限に引き出すためには、DC事業者と通信事業者が担う役割も今後ますます重要になっていくだろう。

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