<連載>AIインフラの新潮流AIデータセンターを支える「脱炭素電源」の可能性 原子力と再エネは主役になるか

生成AIの普及に伴いデータセンターの電力需要が急増するなか、原子力や再エネをはじめとする脱炭素電源に注目が集まっている。本稿では、AIデータセンターを支える新電源の最新動向を紹介する。

風力発電への期待

近年では、風力発電への期待も高まっている。風力発電には、陸地に風力タービンを設置する「陸上風力発電」と、海上で発電を行う「洋上風力発電」の2種類があるが、日本総研の早矢仕氏は「洋上風力発電の方が伸びしろがある」と見る。

陸上風力発電は、洋上風力発電と比べて設置・保守が比較的容易である一方、適地が限られるうえ、風速や風向きに大きく左右されるため、発電量が安定しにくいという問題点がある。

これに対し洋上風力発電は、設備コストこそ陸上より高いものの、海上は風況が安定しており、大型タービンを多数設置することで、大容量かつ安定的な電力を確保できると期待されている。広大な海域を活用できるため、陸上のような用地の制約が少ない点も強みだ。

それぞれの動きを見ていくと、陸上風力発電に関してはすでに具体的な取り組みが進んでいる。グローバルでは、グーグルが2028年以降に稼働予定のミネソタ州のDC向けに、計1.9GW規模のクリーン電源を導入し、その約7割を陸上風力発電で賄うと報じられている。

国内でも、豊田通商とその子会社であるユーラスエナジーホールディングスが、北海道・稚内市で陸上風力発電所直結の「宗谷グリーンデータセンターⅠ(仮称)」を2027年度以降に本格稼働させる計画だ。

宗谷グリーンデータセンターI(仮称)の外観

宗谷グリーンデータセンターI(仮称)の外観

洋上浮体型DCが始動

洋上風力発電との親和性が高そうな新たな試みも始まっている。日本郵船・NTTファシリティーズらは今年3月、洋上浮体型DCの実証実験をスタート。横浜港大さん橋ふ頭に設置されたミニフロート(浮体式係留施設)に、コンテナ型DCや太陽光発電設備、蓄電池を搭載して運用するという。広い土地を新たに確保する必要がなく、冷却には海水を使えるというメリットもある。

日本郵船らが運営する洋上浮体型データセンター の実証プラント全景

日本郵船らが運営する洋上浮体型データセンターの実証プラント全景

この洋上浮体型DCは太陽光発電による運用を想定しているが、将来的に洋上風力発電所の近接海域に配置できれば、太陽光発電や陸上風力発電と比べて大規模かつ比較的安定した電力を確保できるうえ、用地制約の解消にもつながると期待される。

同月には、商船三井や日立製作所らが中古船を改造した洋上浮体型DCの基本合意書(MoU)」を締結。2027年以降の本格稼働を見据え、運用手順の検討や事業化に向けた検証を進めるとしている。洋上浮体型DCには、海洋生物の付着や腐食、塩害への対応といった課題は残るものの、今後の展開が注目される。

前述した宗谷グリーンデータセンターⅠや洋上浮体型DCのように、近傍の発電所から電力を直接調達する形態は「オフグリッド型DC」と呼ばれる。系統に依存しない分、託送料金や再エネ賦課金の負担を軽減できる可能性がある。また、近接の発電所に加え、別系統から電力供給を受けられる構成にすれば、BCP対策としての有効性も高まるだろう。

ただ、国内におけるオフグリッド型DCの本格導入はこれからになりそうだ。「日本の場合、大規模な発電所は沿岸部に設置されるケースが多く、DC側が災害リスクを許容して海側に立地できるかが問われる。それ相応の投資も必要となるため、どのようにファイナンスを工夫していくかも課題になる」(日本総研の早矢仕氏)。

原子力は安定性が強み

再エネ以外の脱炭素電源として、ハイパースケーラーからの関心を集めているのが原子力発電だ。再エネのように天候や気象条件に左右されず、長期間にわたって安定的に電力を供給できる点が大きな特徴である。

「原子力発電は大規模な産業セクターであり、雇用創出や地域経済への波及効果も見込める。再エネと比べても、長年にわたり商用運転が続けられてきた実用性の高い技術だ」とMRI 防災・レジリエンス政策本部 原子力イノベーショングループ 主任研究員の吉永恭平氏は語る。

三菱総合研究所 防災・レジリエンス 政策本部 原子力イノベーション グループ 主任研究員 吉永恭平氏

三菱総合研究所 防災・レジリエンス政策本部 原子力イノベーショングループ 主任研究員 吉永恭平氏

例えばアマゾン ウェブ サービス(AWS)は、ペンシルベニア州の原子力発電所に隣接する「キュムラス・データセンター・キャンパス」を米Talen Energy社から6億5000万ドル(約1030億円)で買収。同発電所から電力を直接調達するオフグリッド型DCとして運用していく計画だ。メタも昨年6月、電力大手の米Constellation社と20年の長期PPAを締結し、イリノイ州で運転する原子力発電所から電力供給を受けると報じられている。

国内では、本格展開には至っていないものの、オプテージが福井・美浜町において、原子力発電で稼働するコンテナ型DCを2026年度中に運用開始する予定だ。

とはいえ、生成AIの普及でDC需要が今後も急増していくことを鑑みると、稼働中の原子力発電所だけで電力を賄い続けるのは難しい。発電所の新設も有力な手段の1つになり得るが、大型の原子力発電所の場合、建設には約10年の期間を要するため、新設のハードルは極めて高い。

そのため、運転停止中あるいは廃炉予定の原子力発電所の再稼働が現実的な選択肢となるだろう。グローバルでは、原子力事業者の米Constellation Energy社が、生成AIによる電力需要の増大を背景に、採算性の理由で2019年に閉鎖を決めたペンシルベニア州の原子力発電所の再稼働を決定したという事例もある。

図表 データセンター事業者による原子力との協業の動き図表 データセンター事業者による原子力との協業の動き

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