トヨタの子会社デルフィスに学ぶ「iPad全社員配布」の費用対効果

トヨタ100%出資マーケティング・サービス・カンパニーのデルフィスは、全社員約470名にiPadを配布し、ワークスタイル変革を進めている。なぜデルフィスは全社員にiPadを配ったのか。そして、全社導入から約1年半、一体どのような投資効果が出ているのだろうか。

会議のペーパーレス化と「どこでも印刷」で印刷コストは20%ダウン

デルフィスではiPadの全社導入後、印刷関連コストを約20%節減できているが、これには「どこでも印刷」と名付けられた仕組みも貢献している。

社内資料のペーパーレス化は進んだデルフィスだが、クライアント向けの提案資料は依然、紙である。そのため同社では今も大量の印刷を複合機で行っているが、こんな課題を以前から抱えていた。「誰も取りに来ない印刷物が複合機に山積みになっている」という課題である。

「当社は情報セキュリティの国際規格であるISMS/ISO 27001を取得していますが、社内監査の際にこれが毎年、重大な問題となっていました」と植田氏は話す。

複合機に印刷物が溜まっていくのは、次の理由からだ。前の人が大量の印刷・コピーを行っていたため、取り消し作業を行わずに、別の複合機から印刷を実行。また、印刷物を取りに行く直前に会議に呼ばれて、「印刷したこと自体を忘れてしまった」というケースも多い。

そこで導入したのが、FeliCaを活用したどこでも印刷の仕組みだった。社員証をFeliCaに変更し、社員証を複合機にかざさないと、そもそも印刷されないようにしたのである。これにより、資料の置き放しによる情報セキュリティ上の懸念を解消すると同時に、ムダな印刷も減らした。

どこでも印刷
FeliCaカードの社員証をかざすことで、社員のIDを認識。その社員の印刷物を出力する仕組みになっている

注目したいのは、単に印刷を制限するのではなく、社員の利便性も高めていることである。急いでいるのに誰かが大量の印刷・コピーを行っていた際には、社員証を別の複合機にかざすだけで、その複合機から出力できるようにした。

また、複合機でスキャンした画像を取得するのに、以前は結構な手間が必要だったが、社員証をかざせばメールで自分宛て送られてくる「SCAN TO メール」という仕組みも導入し、社員に好評だという。

社員の“情報武装”をもう1段階レベルアップへ

前述の通り、デルフィスはiPadの全社導入に際して、その投資効果を試算している。導入から1年半経過し、その結果だが「想定以上の効果が出ている」と植田氏は語る。

そしてデルフィスは今、さらに上を目指そうとしている。現在、社員に支給しているフィーチャーフォンはiPhoneに、そしてiPadはウルトラブック+モバイル通信モジュールへと、それぞれもう1段階レベルアップさせる計画だ。すでに一部社員を対象に、トライアルもスタートしている。ちなみに、iPhoneおよびモバイル通信モジュールはiPadと同様、KDDIを採用する予定だという。

全社員がモバイルツールで“情報武装”することで、企業の生産性は大きく向上する――。iPadの全社導入により、その“確証”を得た同社のワークスタイル変革の取り組みは、今後も続いていく。

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