iPad mini導入で社内連絡が一瞬に
タブレット導入は、すでに取引のあったKDDIの営業担当者からのアドバイスがきっかけだった。蛸屋菓子店の抱える課題を理解していて、「iPad miniを導入すれば、コミュニケーションがよりスムーズになります」と持ちかけたのだ。
“渡りに船”とばかりに蛸屋菓子店は2013年春、106店舗のうち28店舗に各1台と販売部に2台、合計30台のiPad miniを試験導入した。iPad miniを配布した28店舗には、ITへの関心が比較的高いスタッフが多いところを選択した。
試験導入の結果は、期待通りのものだった。具体的には、メール機能によりスピーディに情報伝達できるようになった点が高く評価された。
「従来であれば、数日かかっていた社内連絡が一瞬で行えるようになりました。また、いつでも空いた時間にメールチェックできるため、店舗スタッフはさらに接客に集中できるようになりました」。蛸屋菓子店 販売部主任の熊谷義博氏はこう話す。
そして試験導入から数カ月後、蛸屋菓子店はKDDIの提供するiPad miniを、90店舗ある直営店すべてに1台ずつ導入することを決定した。
iPad miniの本格運用を開始する前には、販売部のスタッフが各店舗を回り、iPad miniの使い方に関する講習を行った。講習は店舗ごとに実施し、その数は最大5回。当初こそ「私には絶対使えない」と話す店舗スタッフもいたが、直感的に利用できるiPad miniを操作していくうちに、そうした声は次第に耳にすることがなくなったという。
「他店に負けたくない!」とiPad mini導入でモチベーション向上
本格導入後、本社と店舗間の連絡は、基本的にiPad miniのメール機能を利用して行うようになり、コミュニケーションのスピードは大幅に向上した。
例えば、各店舗の売上高を集計して順位化し、それを全店舗にフィードバックするといったことが即日実行できるようになった。また、蛸屋菓子店が発行しているメルマガ会員の店舗ごとの獲得数もiPad miniで閲覧できるが、メルマガの会員数はiPad miniの導入後に急増したという。
「各店舗のスタッフは、他店に負けたくないという気持ちが強く、iPad mini導入がモチベーション向上につながっているのです」と熊谷氏。
また、iPadのカメラ機能を使い、催事のディスプレイを撮影して他店舗と共有。互いの良いところを真似し合って、販売実績を向上させてもいるという。実際、「先日の母の日シーズンの売上高は、対前年比3倍を記録しました」と高松氏は話す。
蛸屋菓子店の店内。季節感を大事にして商品をディスプレイしているという |
予約商品である「いちご大福」の顧客への説明をiPad miniで行うといったことも、店舗スタッフのアイデアにより行われている。
予約商品の「いちご大福」の写真をiPad miniで撮影して顧客にお勧め |