KVHは2014年5月7日、新たなイーサネットサービス「etherXEN」を発表した。KVHのネットワークサービスといえば、金融業界への導入実績の多さで知られるが、従来サービス「Ether-MAN」の後継となるetherXENは、金融業界向けにはとどまらないようだ。「ゲーム会社や保険会社など、金融以外のエンタープライズもターゲットにしている」とKVH プロダクトマネジメント部 マネージドネットワークサービス プロダクトマネージャーの田中雄作氏は新サービスの狙いを語る。
KVHのネットワークサービスが金融業界から評価されてきたのは、その低遅延と高信頼という特徴による。etherXENではこの2つの長所を伸ばしながら、エンタープライズを開拓するための改善・強化が図られた。
まずは価格面だ。etherXENは、帯域保証型の「etherXEN Private Line」、AWS Direct Connect回線用の「etherXEN for AWS」、多拠点接続型広域イーサネットサービスの「etherXEN Multi-Connect」からなるが、日本の主要通信キャリアの帯域保証型サービスと比較して最大約30%減の価格設定になっているという。
低遅延・高信頼と低価格を両立できた理由の1つは、最新技術の採用にある。KVHは今回、イーサネットサービス提供のためのバックボーンを全面刷新。SDN技術に対応した米Cyan社のパケットオプティカル「Zシリーズ」を採用した。
同社執行役員 テクノロジー本部 本部長の濱田義之氏によれば、Cyan社はキャリアイーサネット向けのベンダーで、「Blue Planet SDNプラットフォーム」というSDNソリューションを有する。KVHでは、同社のBlue Planet SDNプラットフォームを活用し、ネットワークサービスの自動化・オーケストレーションなどを今後実現していく考えだという。「顧客がポータル上で帯域などを変更できるようになる」(濱田氏)。
また、金融以外の企業のニーズに応えるため、東京、横浜、川崎、千葉、埼玉、大阪の各地域において、基地設置局の数を3倍に増やしてカバーエリアを拡大。「メトロエリアでは、他の主要キャリアと遜色ない」と濱田氏は説明する。
このほか、帯域保証型のetherXEN Private Lineが6Gbpsの品目を用意するなど、大容量も特徴。トラフィック需要の増減に応じて帯域をダイナミックに調整できる、いわゆる「バースト機能」も8月から提供する。遅延時間についても、従来サービスと比べて「都内で最大6割削減した」(田中氏)とのこと。信頼性に関しては、障害時にネットワークが50ミリ秒以内に切り替わるなどのSLAを提供する。
新サービスの提供開始は、etherXEN Private LineとetherXEN for AWSが5月、etherXEN Multi-Connectは8月から。従来サービスのEther-MANは、2016年にサービス提供を終了する予定だ。