「IoT 2.0時代へ、LPWAとWi-Fiの中間埋める」 専業チップベンダーのWi-Fi HaLow戦略

Wi-Fiでは「距離」が届かず、LPWAでは「速度」が足りない――。この不満を解消する選択肢として注目されているのが、サブGHz帯を利用するWi-Fi HaLow(IEEE 802.11ah)だ。同規格に特化したチップベンダーである豪モースマイクロの創業者らに、創業の経緯やWi-Fi HaLowの特徴、そして日本市場の展望を聞いた。

セキュリティカメラやスマートロックで採用拡大

――モースマイクロのWi-Fi HaLowチップは、どういった製品で採用されていますか。

テリー 今、最も大きなマーケットが米国です。特に多いのはセキュリティカメラでの採用です。

従来、こうしたカメラには2.4GHz帯のWi-Fiが利用されてきました。しかし、その通信距離に大きな制約があります。サブGHz帯を利用するWi-Fi HaLowなら、通信距離を大幅に伸ばすことができ、より自由に設置できるようになります。

また、スマートロックにも、モースマイクロのチップが多く採用されています。アパートやホテルに加えて、学校での導入も増加しています。残念なことですが、米国では最近も銃の乱射事件が学校で起こりました。Wi-Fi HaLowを搭載したスマートロックソリューションであれば、職員室でボタン1つ押すだけで、すべてのドアを約3秒で施錠することが可能です。

――同じサブGHz帯を使って、長距離かつMbpsクラスの通信が行えるIoT向け無線規格は他にも存在します。それらとWi-Fi HaLowが大きく違う点は何でしょうか。

テリー ネイティブIP通信である点が挙げられると思います。アクセスポイント(AP)につながった後、別のブリッジを経由する必要なく、直接インターネットに接続できます。

家村 Wi-Fi HaLowとWi-Fiで異なるのはレイヤー1だけで、レイヤー2より上は何も変わりません。ですから設計上の親和性は高く、2.4G/5G/6GHz帯のWi-Fiに加えて、サブGHz帯のWi-Fi HaLowにもシームレスにつながる製品の開発も容易です。サブGHz帯に対応したアンテナはもちろん別途必要になりますが、スマートフォンなどへの搭載も技術的には可能です。

――日本市場の状況はどうですか。

大石 米国と同様、セキュリティカメラやスマートロックでの採用が多いです。また、モースマイクロのチップを搭載したドアホンもあります。ただ、Wi-Fi HaLowの導入は始まっているものの、米国と比べると日本やアジア市場の立ち上がりは少し遅れています。

――日本市場の拡大に向けて、どういった取り組みを行っていますか。

大石 昨年9月には、Wi-Fiの業界団体「Wireless Broadband Alliance(WBA)」のメンバーと共同でフィールドテストを日本で実施しました。2週間にわたり、ブドウ農園、学校、集合住宅、上下水道の4カ所で2.4GHz帯Wi-Fiとの違いなどを試験しています。

例えば高低差が約250mある上下水道でカメラ画像の送信に成功したり、5階建ての建物の3階に設置したAP1台で全階をカバーできたりするなど、Wi-Fi HaLowの性能をフィールドで実証することができました。この日本でのフィールドテストの結果はホワイトペーパーにまとめて公開する予定です。

テリー 現在はまだPoC(概念実証)から商用への移行期にありますが、数年後には日本でも数百万台規模のマーケットになると予想しています。

大石 前述のセキュリティカメラやスマートロックなどのほか、日本ではビルオートメーションにも大変マッチすると思います。

家村 工場や倉庫のマーケットも大きいですね。

大石 ホームゲートウェイへのWi-Fi HaLowの実装だったり、通信事業者とのエコシステム構築などにも注力しながら、日本のマーケットを拡大していきたいと考えています。

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