――11月に「UNIVERGE SVシリーズ」の新ラインナップをリリースしました。5年ぶりの新製品となる「UNIVERGE SV9500/SV9300」は、ITシステムとの連携強化を重点においていますが、その狙いは何ですか。
保坂 新製品の発表とともに「デザインドコミュニケーション」というコンセプトを打ち出しました。SV9500/SV9300のインターフェースを簡易化したうえで公開し、開発パートナー等が容易に、業務システムとSVシリーズを連携させたソリューションを開発できるようにしたことが、最大の特徴です。
コミュニケーションシステムをオープンなものにして、業務システムやアプリケーション側からコミュニケーション機能をもっと使いやすくしようというのが狙いです。ITシステム、つまり業務上の要請に応じて「コミュニケーションをデザインする」ことを可能にすれば、コミュニケーションツールの使い方や利用シーンをさらに広げられます。
新コンセプトは「SDN的」
――コミュニケーションの改善や効率化を目的とするユニファイドコミュニケーション(UC)からさらに一歩進んで、業務そのものの効率化に踏み込もうということですね。
保坂 そうです。我々はこれまで、コミュニケーション環境の改善や働く場所をオフィスの外に広げようとしてきました。いわば、コミュニケーションシステムを中心に据えて、場所の広がりを持とうと考えたのです。しかし、それだけではUCの利用シーンにも限りがあります。UCを提供する他社との違いも生み出せません。
お客様の目的は業務を効率化し、顧客対応を改善し、事業を伸ばし収益を向上させることです。そのためには、オフィスの中でも外でも、業務システムからコミュニケーション手段をどう効果的に使えるかが鍵になります。そこで、コミュニケーションシステムをオープンにして、ITシステムとの連動を深めていくという方向性を打ち出しました。
――SDN(Software-Defined Networking)の概念と似ていますね。ネットワークをオープンにして、アプリケーション側から効率的に利用できるようにするという目的は同じです。
保坂 その通りです。企業のコミュニケーション基盤も同じ方向へ進んでいきます。SDNを推進してきておりIPテレフォニーのトップベンダーであるNECの使命として、企業コミュニケーションで新たな道を率先して切り拓きたいと考えています。
その意味で、大規模向けのSV9500は初めて、従来の専用装置型「テレフォニーモデル」と、汎用サーバー上で運用できる「UCサーバモデル」(2014年3月出荷開始)の2つを用意します。レガシー特有の強固さを求めるお客様には前者を、業務システムとの連動やUCに軸足を置いた使い方を求められるケースでは後者をと、選択肢も広げました。
――中小向けビジネスホンについても、9月に「UNIVERGE Aspire UX」を発売しました。こちらも5年ぶりの新製品で、ラインナップを一新しました。
保坂 Aspire UXにもUCの機能は豊富に詰め込んでいます。SV9500のお客様とはニーズが異なりますが、ビジネスホンクラスでも、単純な電話からUCへ移行していくという方向性は変わりません。その仕掛けを埋め込んでいます。
――UCへの関心が高まり、「Microsoft Lync」がユーザーの評判を集めるなど、PBXメーカーとは異なるプレイヤーも存在感を高めてきました。UCには、どういうスタンスで取り組みますか。
保坂 多様な製品/サービスが登場し、UI(ユーザーインタフェース)も洗練されたことで、一般的なオフィスにもUCの概念が広がってきたことは、良い傾向だと思っています。
ただし、それだけでお客様が満足して使えるかという問題は残っています。例えば、Web会議等で、音声通話と画像・アプリ共有を同時に行うと、相手の声が聞き取りにくくなるといった問題は、未だによく起こっています。そうした使い難さを解消するためにAspire UXに実装したWeb会議では、音声は電話で、データ送信はパケットでと分ける仕組みを入れています。これはほんの一例ですが、我々はUCに先行して取り組みながら、1つ1つ課題を解決してきました。そうした苦労をソリューションとして組み込んでいます。
もちろん、UCは進みますし、NECも率先して推進していきます。しかし、UCはゴールではありません。お客様の事業を伸ばすには、コミュニケーションの改善と同時に、業務そのものの効率化も不可欠です。その両方を今回の新製品はターゲットにしているのです。