ビジネス用アプリが後押し
いつでもどこでも情報を参照すること。それがスマートデバイスの主要な用途だが、スマートデバイスから情報をアウトプットするなど、スマートデバイスの用途を広げたいというニーズも強い。そのカギを握るのが、他のモバイル機器との連携だ。例えば、訪問した客先で、スマートデバイスに入っている帳票データをモバイルプリンターで印刷する。イーグローバレッジが開発したスマートデバイス向けデータ転送ツールは、そうした用途に適したソリューションといえる。
製造現場でも、スマートデバイスの導入が広がっている。生産機器の保守記録を従来の紙べースからタブレットに切り替える製造業が増えてきた。同様に、保守サービススタッフにスマートデバイスを携帯させて保守記録管理に活用するといった取り組みも広がり始めている。保守記録をスマートデバイスで管理すれば、紙に記した保守情報をPCに転記する作業は不要になる。それにより、現場の業務を効率化することができる。
先進的にスマートデバイスの利用に取り組んでいる企業は、IT活用先進企業ともいえる。こうした企業は、スマートデバイスが登場する以前から、手づくりで顧客別の売上データや製品の在庫データをデータベース化して、社外にいる社員が必要なデータを入手できる仕組みを構築したり、ビデオコミュニケーションシステムの整備を進めてきた。その仕組みがあったからこそ、スムーズにスマートデバイスの活用へと歩を進めることができたといえる。
現在は、スマートデバイス用アプリケーションやサービスが続々と登場している。スマートデバイス向けアプリケーションやサービスを利用すれば、手づくりでシステム整備をすることなく、企業は素早くスマートデバイスの活用を始められる環境が整ってきた。ここでは、スマートデバイスを対象としたビジネスアプリケーションおよびサービスの動向を見ていく。
営業支援やドキュメント管理
IDC Japanは、スマートデバイス向けビジネスアプリケーション分野として企業の注目度が高いのは以下の分野と分析している。
(1)営業支援/ 顧客関係管理(SFA/CRM)
(2)メール/スケジュール管理
(3)ドキュメント/カタログ管理
(4)社内ソーシャルネットワーキング
(5)コラボレーション/カンファレンス
(6)ビジネスインテリジェンス/アナリティクス
営業支援/顧客関係管理の分野では、SFA/CRMソフトベンダーがスマートデバイスへの対応を進めている。メール/スケジュール管理分野でもUCベンダーを含めて同様の動きが広がっている。メールやスケジュール管理、社内ソーシャルネットワーキング、コラボレーション/カンファレンス分野は、どこにいてもタイムリーなコミュニケーションが可能な仕組みを構築したいという企業のニーズを現している。電源をオンにすればすぐさま利用できるスマートデバイスは、そのニーズに応えることができる。
ドキュメントの作成・参照は、ビジネスパーソンの仕事に不可欠だ。カタログは営業担当者の基本ツールとなっている。そしてドキュメント/カタログは、ビジネスパーソンにとって最も身近なコンテンツだ。「スマートデバイスを試しに導入したいが、何に使ったらいいのかわからず悩んでいる企業が多い」とAndroid端末向けコンテンツ管理ソリューションを開発したNECシステムテクノロジーの技術者は話す。
ドキュメント/カタログ管理は、スマートデバイスの活用法としてわかりやすく、しかも、すぐに効果を発揮する。その効果とは、最新のコンテンツを共有できることだ。スマートデバイスの業務利用として簡易に始められるのが、ドキュメントの共有といえるだろう。
ビジネスインテリジェンス/アナリティクスは、データ分析ツールだ。顧客の取引データを分析、その結果を営業担当者が携帯しているスマートデバイスに表示するといった使い方がある。顧客を訪問する前に取引データを参照すれば、顧客に対する提案の質を高めることができる。データ分析ツールは、フロントの社員が活用する情報を提供するためにバックオフィスの営業支援部門が利用するツールだ。
ここで、スマートデバイスに対する企業のニーズとそれに対応するスマートデバイスの進化方向を整理しておこう(図表2)。
図表2 スマートデバイスの企業活用におけるポイント |
スマートデバイスの活用を進める企業の目的は、ワークスタイルの変革だ。その取り組みが社内に広がる中で、スマートデバイスと既存システムとの融合が進んでいくだろう。また、用途も広がっていく。ビジネスのフロントからオフィスまで、至るところでスマートデバイスが活用されることになるだろう。
そこで求められるのが、他のモバイル機器との連携だ。そして、スマートデバイスの運用管理を簡素化し、管理者の負荷を軽減することが、今後のスマートデバイス活用において重要なテーマとして浮上してくるだろう。そのカギを握るのが、モバイルデバイスマネジメント(MDM)の進化だ。
普及が進むMDMに新たな動きが生じている。スマートデバイスを管理するための機能を拡大させつつ、いくつもの機能を統合的に提供することがそれだ。企業がスマートデバイスを使いこなすにつれ、アプリケーションを管理する担当者の負荷は増える。スマートデバイス管理の効率化が重要となってくる。MDMベンダーのインヴェンティットは、モバイルデバイスのセキュリティを担保することに加えて、アプリケーション管理やコンテンツ管理などの機能を取り込むなど、スマートデバイスを統合管理するサービスへと進化させて企業の求めに対応していく。