ICT技術解説[第2回]ビデオチャットを劇的に身近にするブラウザ技術「WebRTC」を徹底解説

ビデオチャット、ボイスチャットなどのリアルタイムコミュニケーションをプラグインなしにWebブラウザだけで実現する技術が「WebRTC」だ。ネットを介したリアルタイムコミュニケーションの可能性をさらに広げるWebRTCを今回は解説する。

(4)WebRTCを活用したソリューションの動向

W3CでWebRTC規格のワーキングドラフト(作業部会における原案)が公開されると、早くも各社からいろいろなWebRTCソリューションやデモが発表されるようになった。

まず、Webの世界と移動体通信の世界をシームレスに統合するWebRTCソリューションとして、エリクソン、Mozilla、AT&Tの3社が世界最大のモバイル関連イベント「Mobile World Congress 2013」(2013年2月)において実証デモを行った。このデモはエリクソンのWeb Communication Gateway、MozillaのFirefoxにおけるWebRTC対応、AT&Tの電話網にアクセスするためのAPIをベースに、MozillaのFirefoxを使って通話サービスを実現するというもの。今回のデモにより、通常はモバイル端末にしか実装されていない音声通信、テレビ電話、SMSやMMSメッセージといった数多くの機能を、Webブラウザで実現できることが実証された。

エリクソンのWebRTCに関する取り組みは早く、2012年10月には世界初のWebRTC対応のモバイル用ブラウザ「Bowser」をリリースしている。BowserはiPhone、iPad、Androidで動作する。

世界初のWebRTC対応モバイル用ブラウザ「Bowser」
世界初のWebRTC対応モバイル用ブラウザ「Bowser」(出典:エリクソン[https://labs.ericsson.com/blog/bowser-the-world-s-first-webrtc-enabled-mobile-browser])

また、スペインのTelefonicaが2012年に買収したTokBoxからは、WebブラウザとiOSデバイスの両方でWebRTCによるビデオチャットができる世界初のプラットホーム「OpenTok for WebRTC」が提供されている。

このサービスでは、新たに作られたメディア分散フレームワークMantisにより、WebRTCの制約を克服する。つまり、WebRTCはP2Pの通信形態を取るので、そのままではビデオチャットなどは二者間が基本スタイルになる(1対nやn対nで接続するには各ピアごとにRTCPeerConnectionを使って人数分のデータを取得し接続する必要がある)。そこで、Mantisが仲立ちすることによって、三者以上の複数者間のビデオチャットが容易に実現できるようになる。将来はビデオストリームをユーザの帯域条件やニーズに合わせて最適に構成することもできるようになるという。

さらに、オラクルからはキャリアグレードの信頼性とセキュリティを備えたWebRTCサービス/アプリケーションを開発するための支援ツール「Oracle Communications WebRTC Session Controller」が登場した(図表4)。

図表4 WebRTCの開発支援ツールの例
WebRTCの開発支援ツールの例
出典:オラクル[http://www.oracle.com/us/industries/communications/communications-webrtc-ds-2021071.pdf

この製品は「Oracle Communications Converged Application Server」および「Oracle Acme Packet Net-Net Session Director」をベースに開発されており、「Oracle Communications Unified Communications Suite」と組み合わせることで、共有のデジタル・ホワイトボード、音声・テレビ会議などでコラボレーションすることが可能となる。主な特徴は以下の通り。

・キャリアグレードのシグナリング(通信を始める前のネゴシエーション)、ポリシー、課金をWebRTCアプリケーションと統合することが可能。

・OAuthといったWebベースのID認証規格に対応し、顧客はRTCアプリケーションに自分のWeb IDでサインインすることが可能。

・WebRTCクライアントとSIP(Session Initiation Protocol)に基づくUCシステムとの連携が可能。

・ユーザーは、RTCセッションの中断や再開を同一デバイスで、またはシームレスに複数のデバイスを行き来しながら行うことができる。

・切断されたセッションを回復するアプリケーションのリハイドレーション機能によりWebコミュニケーションの信頼性を向上。モバイルやブロードバンドの接続が切れた場合の再接続を容易にする。

・信頼性を確保しつつWebRTCを何百万もの加入者に拡大して提供するとが可能。

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