「時間や場所からの解放」でフレキシブルな働き方を実現
ダイバーシティを進めていくうえでの第一歩は女性活用だが、それは多くの企業にとって最も身近なマイノリティが女性だからである。「女性活用がダイバーシティのリトマス試験紙だと思っている。女性を活用できなければ、他のダイバーシティはきわめて難しい」
では、女性活用を進めることで、企業競争力は本当に上がるのだろうか。海外では様々な調査が行われているが、例えばコンサルティング会社のCatalystによれば、こんな結果が出ているそうだ。女性活用が進んでいる企業の上位4分の1と下位4分の1を比較したところ、上位4分の1の企業のROE(株主資本利益率)平均は35%も高くなっている。
女性活用と企業業績の相関関係 |
このように女性活用と企業競争力には確かな相関があるわけだが、翻って日本企業の女性活用の現状はどうなっているのかというと、OECDの調査によると2012年は132カ国の中で101位。2011年の98位よりも、さらに後退するという残念な結果になっている。その理由を内永氏はこう説明した。
「ここ数年の日本のダイバーシティの動きは、過去と比べると圧倒的に良くなっている。にもかかわらず、世界ランキングが悪くなっているというのは、圧倒的に良くなった日本よりも、世界の動きはさらに速いということだ」。日本企業が競争力を高めていくためには、ダイバーシティへの取り組みをもっともっと加速させていく必要があるのだ。
そこで内永氏が理事長を務めるJ-Winでは、ダイバーシティ推進を支援する様々な活動を行っているが、女性のキャリアアップ阻害要因としては次の3つが挙げられるという。
J-Winの活動の概要 |
まずは「将来像が見えない」ことだ。自分が勤める企業の中にロールモデル(手本)になるような女性がおらず、そのため自分の将来像も見えず、退職などにつながりやすい。
2つめは「オールド・ボーイズ・ネットワーク」。これは、「長い間、男性中心の社会だった組織や企業で阿吽の呼吸で共有されてきた独特の男性間の文化や雰囲気」を指す。
そして、3つめが「仕事と家事/育児とのバランス」。ワークスタイル変革Dayのメインテーマである働き方に関する課題だ。「日本企業の競争力を上げていくダイバーシティにとっては、フレキシブルな働き方が非常に大きな支えになる」
仕事と家事/育児とのバランスを実現するためのポイント |
フレキシブルな働き方を実現するうえで、まず大事なのは「時間や場所からの解放」だという。「いつ、どこで働いてもいいではないか。朝9時から5時まで、オフィスに皆が集まってフェイス・トゥ・フェイスで仕事をする。こうしたやり方をやっている限りは、効率は上がらない」。ITの進化によって、現在ではオフィスに集まらなくても、密にコミュニケーションしたり、オフィスと変わらない生産性で仕事することが可能になっている。
また、フレキシブルな働き方を本当に進めるためには、就業規則の変更やITの活用だけでは不十分である。
「アウトプットで評価するのか、長時間労働で評価するのか。短時間で高い成果を上げている人が高く評価されているかというと、何となくされていないケースは多いはず。所属長の目の前で長時間働いていないと評価されないというのでは、フレキシブルな働き方は進まない」と、評価システムにも手を入れることの重要性を訴えた。
そして、内永氏は「ダイバーシティはイノベーションの源泉であるし、グローバル時代の経営戦略そのものともいえる。そのダイバーシティを推し進めるインフラストラクチャとして、フレキシブルな働き方のことを考えていってほしい」として講演を締めくくった。