富士通のネットワークサービス事業戦略「UCへの流れは止められない」――香川執行役員インタビュー

富士通のネットワークサービス事業本部は、大規模な組織再編で垂直統合の強みを発揮できるようになった。UC(ユニファイド・コミュニケーション)への移行が進むなか、提携しているシスコシステムズのUCに付加価値を付けて販売したいと香川進吾執行役員は意気込みを示す。


――2012年度の連結決算は729億円の最終赤字でしたが、セグメント別ではネットワークサービス事業本部も含まれるテクノロジーソリューションが唯一、増収増益となりました。好調の要因についてお聞かせください。

香川 スマートフォンをはじめとするモバイル端末がネットワークにつながることで、データトラフィックは拡大の一途をたどっています。さらに、自動車や住宅、産業機械などさまざまなモノがネットワークに接続するM2Mの広がりも、こうした傾向に拍車をかけています。

このため、昨年はデータトラフィックが爆発的に増加し、その対策として大型案件を受注するなど、当社のネットワークサービス部門の需要が大幅に拡大しました。

企業もネットワーク投資が復調傾向にあり、そうした恩恵を受けて、事業本部としても過去5年間で最高の売上高および営業利益を更新しました。

――クラウド化やスマートデバイスの法人導入が徐々に進む中で、企業のICT利用にどういう変化が見られますか。

香川 企業では、ICT利用の目的が従来のコスト削減からビジネスイノベーションの創出へと変化しており、それに合わせて、IT部門だけでなく現場の事業部門や経営層までもがICTを経営ツールとしていかに活用するかを意識するようになっています。

他方、セキュリティ意識も高まっており、コンプライアンスの問題として深刻に受け止められるようになっています。

――そうした状況におけるベンダーの役割とはどのようなものですか。

香川 ICTの利用環境がマルチ端末、マルチアクセス、データセンターの集中化へと向かう中で、お客様はベンダーに対し、それらをビジネスの成長のためにいかに使いこなすかを現場に入って自分たちと一緒に考えることを求められています。

ベンダーは、お客様が持っている商品・サービスとICTを組み合わせると何がどう改善するのか、あるいはその先にいる利用者にどのようなサプライズや価値を提供できるのか、といった提案力や構築力、運用力などの「総合力」を発揮しなければならなくなっていると思います。

富士通 執行役員 ネットワークサービス事業本部長 香川進吾氏

組織再編で垂直統合の強み

――5月1日付で大規模な組織再編が行われました。どのように変わりましたか。

香川 従来は産業・流通、金融・社会基盤、公共・地域、FJM(富士通マーケティング)グループ、海外ビジネスという5つのマーケットに対し、プロダクト、サービス、SI、ユビキタスなど6つの事業に分かれていました。

今回、この6部門をインテグレーションサービス部門とサービスプラットフォーム部門の2部門に統合しました。我々ネットワークサービス事業本部はインテグレーションサービス部門に入り、業種SE部隊と統合しました。

これまで当本部はエンドツーエンドのトータルソリューションを提供してきましたが、新たな組織体制では業種SEと一体になることで垂直統合の強みを発揮できるようになり、真のトータルソリューションを提供できる環境になっています。

――マーケットごとに業種横断的に入っていきやすくなり、それぞれの付加価値を出しやすくなったということですか。

香川 そうなります。お客様の業務システムの中には旧来からのプログラムが点在的に残っているいわゆる“スパゲッティ状態”で、イノベーションを起こしたくても起こせないケースもあります。

そこで、既存のシステムを見える化、設計書化、スリム化した上で、新しい環境の下で使えるようにするお手伝いをしています。当社ではこれを“モダナイゼーション”と呼んでいるのですが、その一環として、スマートデバイスの活用によるワークスタイル変革や利用者の利便性向上を図るための提案などを進めています。

月刊テレコミュニケーション2013年7月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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