F5ネットワークスジャパンは2013年8月29日、レイヤ4-7スイッチのローエンドモデル「BIG-IP 800」を発表した。その最大の特徴は、138万円という価格。日本市場だけに投入されるという戦略モデルだ。
BIG-IP 800の基本スペック。BIG-IPの品質や機能性はそのままだという |
BIG-IP 800を投入する理由について、代表取締役社長のアリイ・ヒロシ氏は「従来、F5が入り込んでいないマーケットにアタックしていくため」と説明した。
シニアソリューションマーケティングマネージャの帆士敏博氏によると、レイヤ4-7スイッチのマーケットは大きく2つに分けられるという。1つは、「1秒たりともダウンタイムが許されないようなミッションクリティカルなマーケット」(帆士氏)。品質や信頼性、パフォーマンス重視のこのマーケットはベンダー出荷額で約86億円の規模で、F5は50%以上のシェアを持っているという。
もう1つは、トランザクションはそんなに多くなく、価格が重視されるマーケットだ。こちらの市場規模は約57億円だが、F5はこれまでまったくの手付かず。「パートナーも我々もBIG-IPが一番いい製品だと自負している。ただ、このマーケットで使われていないのは、純粋に価格が要因」と帆士氏は話した。
F5によれば、ADC市場は2つのセグメントに分かれる。BIG-IP 800投入の狙いは左下の価格重視セグメントへの本格参入にあるという |
例えば、あるクラウドサービスプロバイダーは、顧客向けに3種類のADCサービスを提供しているが、F5のADCを採用するのは最も高額なサービスのみ。そのクラウドサービスプロバイダーの担当者は、本当はBIG-IPを採用したいが、価格面での折り合いが付かないため、高額のADCサービスだけに採用しているとのこと。
そこで今回、価格を重視する中小規模のユーザーにもBIG-IPを採用してもらえるよう、戦略的なプライシングで投入するのがBIG-IP 800である。
F5によるBIG-IP 800と他社のエントリーモデルとの比較 |
IDC Japanの調査では、F5のレイヤ4-7スイッチ市場におけるシェアは31%。9年連続のシェアトップを獲得している。だが、ITRの調査では、シェア1位の座をコストパフォーマンスを売りにするA10ネットワークスに奪われている。さらに、グローバル市場でのシェア45%と比べても、日本のシェアはだいぶ見劣りしているのが現状だ。
アリイ氏は、従来手付かずだったマーケットもBIG-IP 800によって開拓していくことなどで、「今後2年間で日本でのシェアを50%にする」との目標を語った。
また、この日はBIG-IPの新バージョン11.4も発表。VXLANゲートウェイ機能をADCとして初めて搭載したほか、新しく立ち上がったサーバーに対して自動的に負荷分散やファイアウォール機能を適用できるようになるなど、SDN/クラウド向けの機能が強化されているという。