日本HPが通信キャリア向けセミナー、NFV・SDN時代の新たなビジネスモデルを提案

創立50周年を迎える日本HPが、通信キャリアを対象とするプライベートセミナーを開催した。技術開発企業への回帰を打ち出したHPが取り組む、クラウド、BIGDATA、NFV/SDNなどの革新的なソリューションに来場者の関心が集まった。

日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は2013年6月19日、通信キャリアを対象としたプライベートセミナー「HP Telecom Executive Forum 2013」を東京都港区のホテルで開催した。

HPは、OSS/BSSを中心とした通信キャリア向けソリューションの有力プレイヤーの1社で、日本のキャリアにもさまざまな分野で同社の製品が採用されている。

HP Telecom Executive Forumは、通信キャリアのエグゼクティブ層、ネットワーク担当責任者、技術研究責任者を対象に、世界市場における通信インフラの技術・ビジネスの動向とHPの最新のソリューションを紹介する場として、この時期に開かれているもの。今回は、1963年9月に米HPの初のアジア拠点として日本HP(当時は横河ヒューレット・パッカード)が設立されて50年目にあたることから、同社の創業50周年記念イベントの1つとして開かれた。

フォーラムは、通信のグローバル市場の動向とそれを踏まえたHPの事業・製品戦略をテーマとする「エグゼクティブトラック」と通信キャリア向け製品の最新ラインナップを紹介する「ソリューショントラック」の2部構成で行われた。

技術開発企業に回帰する

エグゼクティブトラックでは、まず日本ヒューレットパッカード代表取締役社長執行役員の小出伸一氏が「HP Japan 50周年にあたって」と題して、挨拶を行った。

日本HP代表取締役 社長執行役員 小出伸一氏
日本HP代表取締役 社長執行役員 小出伸一氏

小出氏は、まず、現在のマーケットを2010年から今に続くICTがスマートグリッド、スマートシティなどの社会インフラに貢献できる時代に差し掛かっていると指摘。今こそ74年前の米HP創業時の「革新的な技術をもって社会・企業に貢献する」という企業理念が生きてくると述べた。

さらに、2011年に就任したメグ・ホイットマンHP本社CEOが打ち出した新戦略に言及、HPが近年採ってきたM&Aによる技術や事業領域の拡大という方針を転換し、「HPの原点に立ち返り、R&D投資を強化することによってイノベーションに貢献していく。」と述べた。

さらに「モビリティとソーシャルによって、人々のコミュニケーション/コラボレーションが劇的に進み、そこからもたらされる膨大で多様なデータがクラウドに蓄積されていきます。また、これらの情報はビッグデータとして利活用され、新たな価値や知見を生みだしながら、さらなる変革をもたらしていきます」と語った。

最後に小出氏は、「通信キャリア様との50年にわたるお付き合いに感謝するとともに、これからの50年もお客様のビジネスに貢献していきたい」と締めくくった。

通信キャリアのビジネスを変革できる新しいソリューションを

続いて行われた基調講演では、HP本社で通信業界向け開発部門(CMS)のCTOを務めるジェフ・エドルンド氏が「次の成長に向けて、HPがお手伝いできること」と題して、向こう10年を視野に入れた同社の通信事業者向けソリューション戦略を解説した。

ジェフ・エドルンド氏
ヒューレット・パッカード・エンタープライズサービス・コミュニケーション&メディアソリューソンズ(CMS) CTO ジェフ・エドルンド氏

まず、エドルンド氏は、2013年の技術開発の動向について説明、(1)顧客体験にフォーカスしたOSS関連のソリューション、(2)BIG DATA、(3)通信キャリア向けクラウド、(4)M2Mの分野に力を入れているとした。このうち(1)では、通信キャリアの多様なネットワーク、サービスの状況を経営幹部が1つのコンソールで把握できる「ユニファイド OSS コンソール」の提供が始まっており、今年から広く展開されることになるという。

その上で今年下期から新たなチャレンジとして、(1)Wi-Fiオフロード、(2)ネットワークの運用や構築を代行するマネージドサービス、(3)仮想化によりサービス展開の効率化、ネットワークコストの大幅な削減を可能にするNFV、SDNへの取り組みを強めているという。

さらに、2011年からCMSが取り組んでいる技術開発戦略の全体像を、3つのホライゾン(地平線)に例えて解説した。「ホライゾン1」はHSS(加入者情報管理)やRTC(リアルタイム課金)など、コアビジネスをさらに発展させていくもの、「ホライゾン2」は通信キャリアのネットワーク上で新たなビジネスを作り上げていく取り組み、そして「ホライゾン3」は通信キャリアのビジネスを変革できる新たなイノベーションを意味する。

エドルンド氏は既に実用化されているホライゾン3のソリューションの例として、携帯電話機が手元になくてもWeb上で携帯電話の発着信やメール、履歴の確認ができる「VMP(バーチャルモバイルフォン)」を紹介した。

またHPでは、社内で新しいアイディアを持つ社員に資金を提供、実現につなげるベンチャーキャピタル型のフレームワークを有しており、この枠組みを社外との共同開発にも活用しているという。

その上で、エドルンド氏は「3Gは通信産業を変えた。4Gとクラウドはすべての産業を変える」(AT&T CEOのランドール・スティーブソン氏)などの通信業界のキーマンの発言を織り交ぜながら、通信キャリアのさまざまな課題を解決するHPの最新ソリューションを紹介した。

次いで演壇に立ったのが、HPの通信キャリア向けソリューションの開発で中心的な役割を果たしているHPディスティングイッシュド・テクノロジストのゲイリー・イオスベイカー氏。セッションでは、仮想化技術を駆使した新たなネットワークアーキテクチャ、NFV/SDNをテーマに、NFVとSDNのコンセプト・技術面の差異から、標準化動向、さらにはHPが想定しているビジネスモデルまで、この新たなネットワークの実像を報告し、来場者の強い関心を集めた。

ゲイリー・イオスベイカー氏
ヒューレット・パッカード・エンタープライズサービス・コミュニケーション&メディアソリューソンズ(CMS) HPディスティングイッシュトテクノロジスト ゲイリー・イオスベイカー氏

エグゼクティブトラックの最後を飾ったのが、ノーザンテレコムジャパンの代表取締役、米グーグル副社長、同社日本法人代表取締役を務めた村上憲郎氏による50周年特別記念講演「通信ビジネスが変わる――スマートグリッド、ビッグデータが開くICTの新地平」。

村上氏は、まず日本でも整備が進められている賢い電力線網「スマートグリッド」が全世帯をつなぐ新たなインターネットインフラになると指摘、このインフラの上で人と物、物と物が情報をやり取りする「モノのインターネット」というべき新市場が成立するという見方を示した。

さらに通信業界でも関心が高まっているBIG DATAにも言及。現状のバージョン1.0の段階から、「機械学習」や「意味解析」などの新手法を駆使して人工知能的な性格を持たせた「BIG DATA2.0」に進化しつつあり、開発が米国を中心に急ピッチで進められていると指摘した。日本でも「IT融合フォーラム有識者会議」などでBIG DATAの「次」を見据えた議論が始まっているという。

村上憲郎氏
村上憲郎事務所 代表取締役 村上憲郎氏

エグゼクティブトラックに先立って行われたソリューショントラックでは、まず日本HP・通信メディアソリューションズ統括本部 CMSプラクティス本部 本部長の三木寛氏が、HPの通信キャリア向けソリューションの全体像を報告。続いて、(1)通信キャリアのBIG DATA活用、(2)OSSタスクオートメーション、(3)クラウドビジネス、(4)Software Defined Server「HP Moonshot System」、(5)通信業界におけるセキュリティ対策をテーマとしたセッションが行われた。

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