「20年に及ぶシトリックスの歴史は、基本的に3つのフェーズで構成されている。まずはリモートアクセス。次の第2世代は仮想化。そして今、我々は第3世代に入った。モバイルワークスタイルのフェーズだ」
マイケル・キング代表取締役社長のこんな挨拶から始まった、6月11日のシトリックス・システムズ・ジャパンの記者説明会。主役はもちろんモバイルワークスタイルを実現するための新製品たちである。
まず紹介されたのは、デスクトップ仮想化(VDI)ソリューションの新バージョン「XenDesktop 7」だ。「モバイルのシーンでいかに快適な経験を提供するか」(テクノロジー&ソリューションズ シニアマネージャーの竹内裕治氏)が今回のメジャーバージョンアップの特徴の1つとなっている。
XenDesktop 7のモバイル向けの主な強化ポイント |
デスクトップ仮想化が柔軟なワークスタイルを実現するうえで有用なことは確かだが、モバイル環境での利用には大きく2つの課題があった。1つはネットワークの問題だ。ネットワーク越しに画面を転送して利用するため、高速大容量なネットワークが必要になる。
もう1つはUIの問題。スマートフォンやタブレットといったタッチインターフェースの端末では、やはりキーボードとマウスを前提にしたUIは操作しにくい。
こうした課題を解消するため、XenDesktop 7ではまず、動画圧縮技術H.264の採用によりWANの帯域効率を2倍に向上させたという。これにより、フルHDビデオの視聴も3G回線で可能になったとのこと。さらに「指を使った操作に最適なインターフェースを用意」(竹内氏)したほか、モバイルデバイス向けのWindowsアプリケーションを開発するためのSDK「Mobile SDK for Windows Apps」も強化。モバイルデバイスのGPS、センサー、カメラ機能を組み込んだWindowsアプリケーションを開発できるそうだ。
このほか、従来かなりの数に上ったコンソールを2つに集約するなど、運用管理面も大幅に改善しているという。
SDKを使ってモバイル向けに最適化したWindowsアプリ。左が元のインターフェース、右が最適化後 |
スマートデバイス向けの管理ソリューション「XenMobile Enterprise」も発表された。これは以前から提供しているMDM(モバイルデバイス管理)ソリューション「XenMobile MDM」と、「CloudGateway」の名称で提供してきたMAM(モバイルアプリ管理)ソリューションをセットにしたもの(関連記事)。
XenMobileの管理下で動くセキュアな企業向けアプリケーション「Worx Mobile Apps」も用意されており、電子メール/カレンダー/連絡先の「WorxMail」、セキュアブラウザの「WorxWeb」などが含まれている。これらのWorxアプリではコンテナ化技術により、データ暗号化やパスワード認証、アプリケーション単位のVPNなどのセキュリティポリシーをアプリケーション自体に適用することができる。
「Worx App SDK」を使ってXenMobileで管理可能なWorxアプリを自社開発することも可能だ。「コードを1行加えるだけ」(事業開発本部 プロダクトマーケティング部 シニアプロダクトマーケティングマネージャーの的場謙一郎氏)で、XenMobile対応のアプリを開発できるという。また、シトリックスではサードパーティベンダーが開発したWorxアプリを紹介する「Worx App Gallery」も提供し、80種類以上のアプリが揃う予定とのことだ。
さらに、企業向けのドキュメント共有ソリューションである「ShareFile」についても機能強化が行われ、新たにSharePointやWindows Azureのストレージにも対応している。
今回発表された新製品は、いずれも7月10日から提供が開始される。