富士通は2025年3月21日、窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(以下、GaN-HEMT)を用いたパワーアンプで、周波数2.45GHzにおいて世界最高の電力変換効率85.2%を達成する技術を開発したと発表した。
電波を遠く飛ばすために必要なパワーアンプの電力損失を低減するもので、無線通信やレーダーに加え、無線電力伝送などへの活用も期待されるという。
無線通信のほか、気象・防衛向けレーダー、電子レンジなどの家電製品では、ギガヘルツオーダーの高い周波数の電波が使われており、それらを発生させるためには多くの電力を消失している。特に、電波を空間に放出させるために用いるパワーアンプは消費電力が大きい。
GaN-HEMTは、2000年代に移動通信基地局用のパワーアンプとして実用化されてから広く普及している。富士通は2021年に、世界トップの電力変換効率82.8%を達成。今回は、さらなる高効率化のため、電流を多く流したいチャネルと呼ばれる層の高品質化と、電流を流したくないバッファと呼ばれる層の高抵抗化を行ったという。
開発した技術の概要
これらの技術により、ISMバンド(Industrial Scientific and Medical Band)である2.45GHzにおいて85.2%の電力付加効率(与えたDC電力がどれだけ信号の増幅に寄与したかを示す)および89.0%のドレイン効率(与えたDC電力がどれだけ出力電力に寄与したかを示す)を達成した。いずれも2025年3月19日現在、世界最高効率の値だ。
これまでの報告例と本発表の特性比較
当社は今後、本技術の実用化を目指し、実装技術の開発と信頼性の評価を進める。また、ミリ波やサブテラヘルツ波などの高周波デバイスにも同技術を適用することで、広い周波数範囲でワイヤレス機器の省電力化を行い、地球環境問題の解決に貢献していくとしている。