サービス提供の柔軟性を高める「CFS-RFS-Rモデル」に準拠
業界標準への迅速かつ的確な対応も、コマーチの特長の1つだ。SOMがサービスを構成し、ROMがリソースを割り当てるというフローも、TM Forumが定義した「CFS-RFS-Rモデル」(図表2)に従っている。CFS-RFS-Rモデルは、通信事業者のサービスの設計・提供・管理を階層化して体系的に整理したフレームワークである。
図表2 CFS–RFS–Rモデル
顧客に提供するサービスを定義しているのがCFS(Customer Facing Service)だ。5G通信プラン、IoT通信プラン、クラウドストレージサービスなどの具体的な商品サービスが該当する。
RFS(Resource Facing Service)は、CFSを実現するための技術的なサービスである。ネットワークスライスやQoSなどが含まれる。
R(Resource)は、RFSのためのネットワーク機器、サーバーなどの物理・仮想リソースを定義する。
イベント参加者向けの5G VIP通信の例では、まず、BSSのポータルにVIPチケット購入者に対して提供したい高速、低遅延な通信サービスのオーダーを入力する。OSSのSOMでは、そのサービスに一致するCFSをVIP通信専用ネットワークスライス、QoSなどのRFSに分解する。次にROMでは、RFSをRに分解し、5G基地局、コアネットワーク機器、トランスポートネットワークの必要なリソースを確保する。これにより5G VIP通信専用ネットワークスライスを構築することができる。
これまではサービス要件を満たすリソースを人間が判断し、ネットワークの各装置に対して設定を行う必要があった。CFS-RFS-Rモデルを用いたコマーチのBSS/OSSを利用すれば、5G VIP通信のようなサービスをBSSに入力するだけで済み、後のリソースはCFS-RFS-Rモデル設定を用いて割り当てられるため、サービスアクティベーションにかかる時間が飛躍的に短縮できる。
「従来のシステムでは、このCFS、RFS、Rのコンフィグレーションを手動で設定していました。そのため、サービス提供のためのリソース確保の柔軟性が欠けていましたが、AI/MLを導入することで、サービス要件やネットワーク状況に応じてリソースを動的に最適化することが可能になります」と小出氏は指摘する。また、将来的には、生成AIを活用することで、TM Forumが定義する自動化レベルの最高位「レベル5」の要素であるインテントベースネットワーキングが近付く。
AI/MLで完全なる自律型ネットワークを実現 デジタルツインにも注目集まる
インテントベースネットワーキングは、何を実現したいかという意図(インテント)を指示するだけで、システムが構成・設定を自律的に最適化する仕組みであり、TM Forumのレベル5 のAutonomous Network(完全自律型ネットワーク)で求められる機能の1つだ。Autonomous Networkとは、AI/MLを活用して人手を介さずにネットワークの運用・管理をリアルタイムで自動化し、効率的かつ安定した通信環境を維持するシステムを指す。
これを実現するには、その前段階として、パフォーマンス監視や障害監視、構成情報の取得、サービス復旧の各プロセスをルールベースで自動化し、ネットワークの自動復旧を可能にするクローズドループの構築が必要となる。
「クローズドループはコマーチが既に提供しているモジュールで実現可能です。さらに、AI/MLを導入することで、障害原因の自動解析や自動復旧、トラフィック予測や障害事前検知も可能になり、真のAutonomous Networkが達成されます」と小出氏。コマーチではこれらのAI/MLソリューションにも力を入れている。
Autonomous Networkの実運用に向け、コマーチは複雑化・高度化するネットワークを仮想空間でシミュレーションできるデジタルツイン機能も提供している。商用導入前に仮想空間で設定などを確認して事前に問題点を見つけ出すことができ、ネットワークの設計や運用の最適化に貢献するため、通信事業者から注目されているという。
「マネタイズは、通信事業者だけでもベンダーだけでも実現できません。お客様のニーズを深く理解し、ネットワークの高度化を支援したいと考えています」とゼズラク氏。コマーチは、通信事業者の積年の課題を解決する頼れるパートナーとなるだろう。
<お問い合わせ先>
コマーチ株式会社
E-mail:telco-enquiries@comarch.com