「国内の教育ICT市場は2024年度から徐々に拡大し、2025年度にピークを迎える」。こう話すのは、調査レポート「教育DX/ICTソリューション市場総調査」を刊行する富士キメラ総研 第一部 担当課長の山田英吾氏だ。
富士キメラ総研 第一部 担当課長 山田英吾氏
2024年度、全国の小・中学校の生徒に「1人1台端末」と高速大容量の通信ネットワークを整備し、個々の子供に最適化された学びや創造性を育む教育を目指す「GIGAスクール構想」の第2期(NEXT GIGA)が始まった。第1期で整備されたICT環境を基盤に、さらなる教育の質向上を目指すフェーズである。
第1期は、ICTベンダーに大きなビジネスチャンスをもたらし、2020年度の教育ICT市場は約5620億円と大きく拡大したが、NEXT GIGAはそれを上回りそうだ。2024年度の教育ICT市場は前年度比42%増の約3600億円、2025年度はさらに伸び、同比58%増の約5700億円と過去最高レベルに達する見込みだ(図表1)。
図表1 国内教育DX/ICT関連市場
※2022年度は見込値、2023年度以降は予測値(出典:富士キメラ総研)
市場を牽引する要素の1つが学習用端末の更新だ。GIGAスクール構想では、端末を5年周期でリプレースするスキームとなっており、2024~2026年度にかけて端末の更新・整備が進むと予想される。
第1期では、全国の小・中学校に約900万台の端末が整備されたが、今回端末1台あたりの補助金基準が4万5000円から5万5000円へ引き上げられたことに加え、必要端末数の15%以内の予備端末も補助対象となったことから、NEXT GIGAでは1000万台以上の端末が整備されると山田氏は見る。
通信機器市場は780億円
通信環境についても需要が拡大すると同氏は予測する。L2/L3スイッチやアクセスポイント(AP)、無線LANコントローラー等を含めた2025年度のネットワーク機器/ツール/サービス市場は前年度比77%増の約780億円、2026年度も約680億円とその勢いを維持するという(図表2)。「複数クラスの生徒が一斉に端末を稼働させると、画面がフリーズするという声も聞いている。教育現場におけるネットワークの整備はまだまだ不十分だ」
図表2 ネットワーク機器/ツール/サービス市場
※2022年度は見込値、2023年度以降は予測値
そのため、2.4/5/6GHz帯に対応し、この3つの周波数帯を同時利用できる「マルチリンクオペレーション(MLO)」等が実装されたWi-Fi 7への期待値も高い。「どの自治体も、ネットワークの遅延や不具合に懸念を持っている。徐々にWi-Fi 7対応APが世に出回ってきていることも考えると、2025年以降はより低遅延なネットワーク環境の構築を目指していくという方向性になるのは間違いないだろう」