例えば、フォトフレームに写真データを送信するサービスを想定しよう。高解像度のデータをそのまま送る必要はなく、フォトフレームの解像度に最適化する処理を行いUDPで送信すればネットワークの負荷も少なく、アップリンクしか使わないため通信コストは安く済む。ユーザーが端末とネットワークとアプリを別々に調達して組み合わせるよりも、使い勝手が良く安いうえに、トータルコストも分かりやすいサービスが完成する。
これはほんの一例に過ぎないが、用途が限定された“専用端末・サービス”であれば、使い勝手と料金の両面でサービス事業者が工夫できる余地は増えるはずだ。
オープンなプラットフォームの優れた点は、水平分業型でさまざまなプレイヤーが作った“部品”を組み合わせてサービスを行えることだ。「それらをまとめ上げ、一体化することで、お客様に大きなメリットを提供できる。使い勝手と料金を追求してサービスを作り上げることは非常に大切なこと」(福田氏)であるし、そうした役割は“ネットワーク屋”にこそふさわしいと言えるのではないだろうか。
ハーモニーは生まれるか
NECビッグローブが2010年度半ばに提供開始予定の新サービスにも、そうした「一体化による効果」を見ることができる。
簡単に説明すれば、本サービスはNECビッグローブが提供するWebタブレット型の情報端末「クラウドデバイス」にアプリやコンテンツの配信を行うものだ。ビッグローブはこれをインターネット接続サービスと合わせて提供。端末が設定を自動で行うため、ユーザーは複雑かつ面倒な作業なしに利用できる(図表2)。
図表2 接続サービスと一体化した価値提案 [クリックで拡大] |
さらに、宅内では固定回線、屋外では公衆無線LAN、そしてMVNOによる3G/WiMAXを介してサービスが利用でき、自動でネットワークを判別して接続するため、ユーザーは接続を意識せずに使える。手続きも料金支払もすべてワンストップで行える。こうしたコネクティビティは、ISPでありMVNOでもある同社だから可能な差別化ポイントだ。
Android端末の多様化が着々と進行し、アプリ開発も盛り上がりを見せているが、個々のプレイヤーの動きがバラバラでは良質なサービスは生まれない。それらを結びつけ、まとめ上げる役割が今こそ求められていると言えるだろう。
ドコモの山下氏も、「ベストなユーザーエクスペリエンスを実現するためには、さまざまなプレイヤーが持つ部品をまとめ上げるオーケストレーションが必要。ハーモニーを生み出せるよう、我々もチャレンジしていきたい」と語る。
Androidビジネスはまだまだ産声を上げたばかり。だからこそ、部品を組み上げる「コーディネート力」こそが、今後のビジネスの発展を推進するエンジンになるはずだ。