機械同士が通信することでデータの収集や更新、監視・制御を行うM2M(Machine to Machine)。長らく「眠れる巨大市場」といわれてきたが、通信モジュールや通信サービスの低廉化もあり、急速に拡大している。国内市場は2011年の680万回線から、2016年には2369万回線まで成長するとの予測もある(図表1)。
図表1 国内のM2M契約数(回線) |
現在、M2Mの利用用途はデジタルフォトフレームが最も多く、全体の28.5%。残り約7割を遠隔監視・制御や決済関連、テレマティクス、在庫管理など法人需要が占める(図表2)。
図表2 国内のM2M利用用途 |
ウィルコム法人事業統括部M2M推進部部長で、ソフトバンクテレコムのパートナー営業本部M2M推進第一部長も兼務する荒木健吉氏は「特にモバイルを活用したM2Mが伸びている」と最近の状況を説明する。
900MHz帯でつながりやすく
ソフトバンクグループでは3G、4G、PHSと複数のモバイルネットワークを提供しており、ソリューションごとに最適なネットワークをアレンジできる点を強みとする。
すなわち、デジタルサイネージやHD画質映像の送受信のような大容量データの送受信には最大110Mbpsの高速通信を可能とする「SoftBank 4G」、テレマティクスや電子マネー決済といった数Mbpsでのデータ通信には3G、在庫管理や遠隔検針など数十kbps帯域での低速なデータ通信はPHSというように、データ通信量に見合ったネットワークを提案している(図表3)。
図表3 ソフトバンクグループのM2M戦略 |
ソフトバンクは900MHz帯で3Gサービスを7月から開始しているが、この周波数帯に対応したモジュールも展開する予定。従来の2GHz帯よりもカバーエリアが3倍に広がり、つながりやすくなることで、全国各地に配置しかつ移転を伴う自動販売機や決済端末、カーナビ・車載器など移動するものへの用途に適しているという。
「これまでソフトバンクの3Gは電波が届きにくい地域もあったが、900MHzでつながりやすくなることはM2Mでも大きな武器になる」(荒木氏)と期待を寄せる。
一方、PHSについては、その特性である低消費電力をさらに高めた「超低消費電力」チップセットを開発した。現行のPHSチップセットは、待受動作時で0.6mAの電力を消費するが、「超低消費電力」チップセットは4分の1に抑えることができる。さらにネットワークと連携した呼び出し方法により工業用のリチウム電池「CR17450」(240mAh/3V)3本で10年間の待受動作が可能になる。
現在、東京ガスと共同で、遠隔遮断・監視サービス「マイツーホー」に設置して実証実験を行っており、今秋以降に一部で先行導入する計画だ。従来は10年間持たせるためには十数本の電池が必要だったが、3本に減ることでコスト削減にもなり導入が容易になるほか、事故率の低下にもつながるという。