SPECIAL TOPICローカル5G×SDRだから他とは違う! 高出力、準同期TDDなどを安価に実現

NECネッツエスアイの「HYPERNOVA」は、オールインワンのコア一体型ローカル5Gシステム。トランクケース型も用意し、持ち運んだ場所でローカル5Gを構築可能だ。しかも、最大4Wの高出力や準同期TDD2/3に対応しながら、申請支援や設置作業込みで価格は600万円。高性能と低コストの両立の秘密はソフトウェア無線(SDR)にある。

4Wの高出力をSDRで実現 上り約720Mbpsにも対応

HYPERNOVAは今年6月開催のインターネットテクノロジーイベント「Interop Tokyo 2024」に出展され、特に注目を集めた新製品に贈られる「Best of Show Award」のモバイルコンピューティング(5G/6G)部門グランプリに選ばれた。選定理由として挙げられたのが、前述の安価なコストなどに加えて、最大4Wの高い送信出力、準同期TDD2/3への早期対応、150W以下の低消費電力といった優れたパフォーマンスである(図表1)。

図表1 オールインワン・コア⼀体型ローカル5Gシステム「HYPERNOVA」の特徴

図表1 オールインワン・コア⼀体型ローカル5Gシステム「HYPERNOVA」の特徴

高性能を安価に実現できているのには、もちろん理由がある。ソフトウェア無線(SDR:Software-Defined Radio)と汎用サーバを組み合わせていることだ。

NECネッツエスアイはSDR技術に強みを持つ東京大学発のスタートアップ、FLARE SYSTEMSと共同開発したソフトウェアベースのローカル5G基地局を、2022年から実証実験など向けに提供している。HYPERNOVAは、その商用バージョンとして開発されたものだ。

では、HYPERNOVAの高出力と準同期TDDについて、詳しく見ていこう。

HYPERNOVAは、5Gアンテナを接続する出力ポートを4基装備し、1ポート当たり1Wの出力を実現している。4ポートを全部用いて4×4MIMOを実装すれば、計4Wの高出力が可能になる。

ローカル5G基地局の1ポート当たりの出力は250mWであることが多い。小型基地局で広く採用されているSoC(System on a Chip)の最大出力が250mWであるためだ。

「しかし、250mWではWi-Fiとほとんど変わりません。Wi-Fiより広範囲をカバーできることがローカル5Gの重要なメリットの1つであり、その特色を出すには1Wが必要と考えました」(有川氏)

NECネッツエスアイ ネットワークソリューション事業本部 サービスソリューション事業部 次世代NW事業統括 マネージャー 有川洋平氏

NECネッツエスアイ ネットワークソリューション事業本部 サービスソリューション事業部
次世代NW事業統括マネージャー 有川洋平氏

とはいえ、高出力なSoCを採用するという方法では、価格が跳ね上がる。そこで、SDRと汎用サーバの組み合わせにより、高出力と低コストを両立させたのである。HYPERNOVAは、1ポート当たり250mWの基地局と比較して約4倍の面積、1基地局当たり半径300~500mのエリアをカバーできる。

準同期TDDによる上り通信の高速化についても一歩先を行く。

ローカル5Gは当初、キャリア5Gと同じタイミングで上り/下りの通信を行う同期TDDのみで運用が始まった。同期TDDの上り/下りの通信比率は1:4と下り重視だが、ローカル5Gの場合、上り通信を重視したいユースケースも多い。そこで追加されたのが、準同期TDD。キャリア5Gとタイミングは同期させつつ、上り/下りの比率は変更できる。

現状、制度化されているのは上下比率が1:1の準同期TDD1だけだが、上下比率5:3の準同期TDD2、同6:2の準同期TDD3も今後利用可能になる見通しだ。ソフトウェアベースのため柔軟な変更が可能なHYPERNOVAは、いち早く準同期TDD2/3の両方にオプションで対応している。すでに実環境での試験も行っており、準同期TDD3では上り約720Mbpsの高速通信を確認できたという。

ソフトウェアベースのHYPERNOVAは、同期・準同期TDDの設定変更や端末の追加・削除なども、GUI画面からユーザー自身で簡単に行うことができる。

衛星通信アンテナ+ローカル5Gで山奥の建設現場もDX化

NECネッツエスアイは現在大きく2つの用途向けにHYPERNOVAを展開している。

1つは、トランクケース型の可搬性を活かした、山間部の建設現場や災害被災地などでの通信手段の確保だ。「当社が扱う衛星通信アンテナと連携させて、仮設的なネットワークを構築し、建設DXで活用していただくことも考えています」と有川氏は言う(図表2)。

図表2 建設現場でのユースケース

図表2 建設現場でのユースケース

もう1つが、製造業や電力プラントなどでの「テスト導入」である。

「AGV/AMRをWi-Fiで制御している工場などでは、同時接続台数が増えると通信が途切れ、その復旧に多くの時間が費やされているなどの課題が見えてきています。ローカル5Gはその解決策になりますが、月100万円でレンタル利用できるHYPERNOVAなら手軽に試していただけます」(有川氏)

HYPERNOVAは、同時接続数が128台以上可能であることを確認済み。ローカル5Gの本格導入を進める工場など向けには、同社が出資する韓国HFR社の大規模ローカル5Gシステムも用意する。

これからの時代、ますます重要になるSDRというアプローチで、NECネッツエスアイはローカル5G市場を切り拓いていく。

<お問い合わせ先>
NECネッツエスアイ株式会社
E-mail:multi-network@ml.nesic.com
※価格はすべて税抜き

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