今、ネットワーク業界で最も注目されているOpenFlowは、いつ、どこから、なぜ、やってきたのだろうか。最初に、その歩みを簡単に振り返ってみよう。
OpenFlowは、2008年に米スタンフォード大学の研究者が実験的に利用していたネットワーク制御プロトコルを標準化させようとしたのが始まりで、OpenFlowのバージョン1.0が登場したのは2010年3月である。現在は「Open Networking Foundation(ONF)」という団体でOpenFlowの標準化作業が行われており、最新バージョンは今年5月に承認された1.3だ。
図表1 OpenFlowの標準化団体「ONF」の概要 |
(出典:NEC) |
ONFには2012年6月時点で70社が加盟しているが、注目すべき点の1つはネットワークベンダー以外でボードメンバーが構成されていることだ。ONFのボードメンバーは、ドイツテレコム、フェイスブック、グーグル、マイクロソフト、ベライゾン、ヤフー、NTTコミュニケーションズの7社。いずれも膨大な数のネットワーク機器を運用する超大手のユーザー企業である。
このうちグーグルは、データセンターをつなぐWANにすでにOpenFlowを実装済み。また、NTTコミュニケーションズもOpenFlowを活用した企業向けクラウドサービスを今年6月から提供している。
「こうしたユーザーに近い立場の企業が『OpenFlowを推進していこう』と活動をリードしているのがONFの大きな特徴。それでネットワークベンダー側も『OpenFlowにはしっかり取り組まないといけない』となった」とNEC UNIVERGEサポートセンター エキスパートの木梨治彦氏は解説する。
NEC UNIVERGEサポートセンター エキスパート 木梨治彦氏 |
OpenFlow登場の背景
このようにユーザー企業側のニーズに強く後押しされる格好で急浮上してきたOpenFlowだが、これほどまでに注目されている背景の1つには、サーバー仮想化の進展がある。
仮想化技術の登場によって、サーバーの世界では、物理構成に依らない柔軟で効率的な運用が可能になった。一方、ネットワークの世界はどうか。
新規アプリケーションの導入などに伴いネットワークの拡張・変更が必要になるたびに、物理的にネットワーク機器を増設したり、スイッチやルーターなどのネットワーク機器を1台ずつ設定し直す必要があるなど、大変なコストや手間が生じている。また、VLANを超えた仮想マシンのライブマイグレーションもできない。サーバーの世界と比べれば、ひどく遅れてしまっているのが実状だ。
ネットワークの世界でも仮想化の進展が期待されるのは当然のこと。最近、ソフトウェアから柔軟にネットワークを集中制御できる「SDN(Software Defined Network)」というコンセプトで、仮想化時代のネットワークの姿が語られることが増えているが、そこでその実現技術として白羽の矢が立ったのがOpenFlowなのである。