ノキア シーメンスCEOが語る「モバイルインターネット」の終わりと「エンゲージメント・エコノミー」の始まり

来日したノキア シーメンス ネットワークス本社CEOのラジーブ・スーリ氏が記者会見を開いた。同氏によれば世界は今、SNSの普及などにより「エンゲージメント・エコノミー時代」という新しい時代に突入しかけているという。

ノキア シーメンス ネットワークス(NSN)は2012年5月31日、CEOのラジーブ・スーリ氏の来日に合わせて、記者会見を開催した。今回の来日は、日本の顧客や行政関係者などとの意見交換を目的としたもの。前日の30日には、移動通信関連イベント「ワイヤレスジャパン」の基調講演(アジアワイヤレスサミット2012)で講師も務めている。

会見ではまずスーリ氏が、「エンゲージメント・エコノミー時代に向けて」と題し、通信市場の動向とNSNの戦略についてのプレゼンテーションを行った。エンゲージメント・エコノミーとは、高性能なデバイスと高速ネットワークの普及により劇的に変化しつつある社会の姿を表現する概念である。

ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)が広く浸透、位置情報の活用などの制御と接続がシームレスに結合した通信ネットワークの下で、個人/グループ/マシンが共存。この中で、人々が知識や教育をより身近なものとして享受できるようになるという。

スーリ氏は、世界は今、モバイルインターネットの時代を終え、エンゲージメント・エコノミー時代の初期段階に差し掛かっているとする。

スーリ氏のいうエンゲージメント・エコノミー時代は、SNSが社会に広く浸透する時代といえる
スーリ氏のいうエンゲージメント・エコノミー時代は、SNSが社会に広く浸透する時代といえる

そのうえで同氏は、新規契約携帯電話の7割をスマートフォンが占め、今年のLTEの平均新規契約者数が月100万件及ぶと見られる日本市場に言及し、「世界のどこよりも早くモバイルブロードバンドとスマートフォンのブームを体験できる最高の環境」と評した。エンゲージメント・エコノミーの先進地区である日本は、未来を見通す「窓」としての役割を果たすというのだ。

NSNのビジネス上でも日本は世界で最も重要な3カ国の1つであり、このマーケットにさらに力を入れていくという。

スーリ氏はエンゲージメント・エコノミー時代に向けNSNが注力している分野として、(1)アプリケーションの動向からトラフィックの増加傾向を予測するなどの活動を行っている「Smart Lab」、(2)液体のように臨機応変なリソース配分を行うことでネットワークの効率的な運用を可能にする「Liquid Net」と総称される無線ネットワーク/コアネットワーク/伝送装置製品、(3)ネットワークに集約された情報を活用して顧客ニーズを割り出し、ユーザー体験を向上させる「CEM(Customer Experience Management)」の3つを挙げた。

経営戦略にも言及。通信キャリアに対しエンド・ツー・エンドでソリューションを提供する伝統的な手法を転換し、同社が強みを持つモバイルブロードバンドとサービスの2分野にリソースを集中させているとした。

日本市場に対しても5月に伊勢原屋外ラボ(神奈川県)を本格稼働、R&Dの人員も20%増とするなど、体制の拡充を図っていると強調した。

会見の冒頭で挨拶に立った日本法人代表取締役社長の小津泰史氏は、この伊勢原ラボでは基地局のバックアップ用電源として、小型で70時間といった長時間運用が可能な燃料電池の実用化に取り組んでいることを明らかにした。

質疑応答で、ガラパゴス化を批判されている日本の移動通信市場への見方を問われたスーリ氏は、「日本独自の要件が減ってきており、グローバル市場の規模のメリットを享受できるようになってきている。良い方向に変化しているのではないか」と語り。今後の日本市場の成長に期待感を滲ませた。

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